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め・て・みみ ~保険本来の競争環境の出現と「2重構造」の廃止ー保険の原点に立ったプロフェッショナリズム確立が急務
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2026年01月27日
【ニュース】
2026年6月1日に、昨年5月30日に成立した保険業法改正が施行となる。すでにそれに向けた監督指針も2025年5月12日公布されたものはパブコメ結果を踏まえ同8月28日に有効となっている。 また、比較推奨販売など同12月17日に出された内閣府令(施行規則)や監督指針も1月30日締め切りのパブコメ結果を踏まえ春には有効となるところから、いよいよルール関連の細目も明確化していくことで方向性は明確になりつつある。 従来の業界慣行が一変し保険の原点に立ったプロフェッショナリズムが経済倫理的に求められるという意味で、保険代理店にとっても歴史的な転換局面、変曲点に立っているといえるのではないか。 積み残しもある。企業内代理店の今後に大きく影響するため、施行後3年の猶予期間を設けているとはいえ、構成員契約規制の運用細目がまだ決まっていないからだ。また前号本欄で紹介したように昨年12月10日から金融庁と経産省が連携し企業リスクリスクマネジメント高度化に向けた検討会もスタートしている。今後の代理店市場流動化に大きなインパクトを与えかねない案件だけにどのようにルール化されるのか注目されるところではある。 有識者会議報告や改正金融商品サービス提供法、保険業法改正の眼目は、長年常態化してきた損保業界(生保も含めた保険業界)の商慣習の在り方が、顧客の軽視や不適正競争、情報漏洩等を生んできたこと、その構造的な変革を求めるものであった。とりわけ、保険会社と代理店間の歪んだ取引慣行などその在り方が問題となり、また規模の大きな代理店との力関係の変化による保険会社の代理店統制上の問題や保険以外の競争(政策株式の保有、本業協力、出向・業務代行など人的支援過度の便宜供与)等の常態化が不祥事の源泉となってきたため、この慣行の解消が法改正を含め、抜本的に図られるところとなった。 こうした中で、顧客の最善の利益遵守と適正競争を図るための環境整備にPDCAを働かせ保険会社ないし保険業界が自主的に取り組むべき課題と監督法制の改正を踏まえて変更するものとを区分けしながら対応が求められたのだった。 損保会社も、商品やサービス・価格による顧客価値の提供という保険本来の競争環境に転換するため、保険会社各社のガチンコの勝負が求められるところとなってきた。しかも、損保業界は日本特有の上位3グループで、全体収保の9割を占めるという寡占市場化しグローバリズムの観点から特殊で制限されたマーケット環境を続け、その弊害が問題視されたため、今回の法改正関連では、料率面では、火災保険の収益改善とともに、火災・自動車・傷害の主要3種目以外に賠償責任、事業活動、動総、ペットなどの分野も参考準率の算定対象種目に拡大し、中小損保の商品開発や新規参入の促進を図ったほか、保険仲立人制度の規制緩和を図るなど、グローバリズムの観点から適正競争に資する制度に変更されている点にも留意する必要がある。 これらの業法改正関連の変更と、それを受けての各損保の経営戦略の変更により、代理店市場の流動化は一気に進むのは必至だ。保険会社も商品・サービス・価格面の本格的な適正競争環境下に入る。すでに大手損保グループの経営戦略(IR資料等)を見ても、海外ビジネスとともに国内ビジネスにおいても改めて収益力アップを明確に打ち出していることが注目される。個人分野(パーソナルライン)ではインフレに対応した機動的なレートアップ、生産性と品質の高い販売網の拡充、法人分野(コマーシャルライン)では、アンダーライティング力と保険+αのソリューション力がポイントとなる。 このため、従来の代理店指向型のスタンス、シェア第一主義からの完全脱却が求められ、顧客志向型への劇的切り替えにより、保険会社と代理店の関係もこれまで経験したことのない厳しいものとなることは間違いない。保険会社の収益力重視の経営方針は、当然のことながら、きめ細かな事業費の見直しに傾く。商品・サービスラインの見直し、リスクに応じた引受・料率設定によるポートフォリオの見直し、不採算分野の厳しい対応が図られるとともに、事業費全体の6割を占める代理店手数料を業務実態に応じた見直し・圧縮に動くことは間違いない。 このことは保険代理店にとって何を意味するのか。保険会社の経営がグローバリズムの観点から、海外でのシビアな収益力ベースの経営戦略展開の尺度と国内経営戦略展開における尺度というダブルスタンダードを解消する方向に転換するということだ。これまでは、日本市場の特殊性に胡坐をかいてきた。日本特有の商慣習を尊重し、寡占体制のもと異様な低廉な保険料水準を維持してきた。これを解消するわけだから、言うなれば海外での尺度に国内の尺度も合わせることにほかならず、国内での従来の「代理店指向」の「保険以外での競争」(政策株式の保有、本業協力、出向・業務代行など人的支援過度の便宜供与)が解消されたため、これからは顧客指向を起点にした、徹底的なアンダーライティングと収益力中心の競争に移行するということだ。 このため、代理店側も、単にコンプライアンスの遵守などの態勢づくりにとどまらず、人材やITへの投資を行い、品質を自主的に高度化し、システムを整備し生産性を向上させるための新たな活路開拓に乗り出さなければならなくなる。プロフェッショナル度の高い、業務品質を備えた組織・体制を完備した代理店が求められる時代に局面が大きく転換する時代に入ったからだ。 保険会社は、法改正を契機に、一気に懸案だった「2重構造の廃止」に動く。実務力のない代理店に対する社員による代行文化を一掃する。「代理店との対話」を通じてすでに現場レベルで徹底されつつあり、その結果、営業拠点網の縮小、営業支援社員の大幅削減、生成AIなどの活用により代理店照会業務の効率化、さらには業務品質評価制度への導入などを図りつつある。保険会社の統制が効きにくい大型代理店対策として損保協会内に第3者機関による業務品質チェックについての業界共通基準が設けられたが、これは一般の専業代理店も含めすべての代理店にも点検チェックシートの提出が求められ、またそれが代理店の手数料ポイントにも大きく影響するところとなる。 各損保とも、この業界共通基準を中心としつつ、併せて定量的な個社独自基準等も加味した手数料ポイント制度を模索しており、顧客本位の業務運営 面を中心とした代理店の最低品質保証として2026年4月から正式に実施となる。言うなればこれからは「品質面での体制が完備している=顧客の最善利益勘案義務を担える」代理店が市場・顧客から求められるところとなる。 例えば、損保ジャパンは、2026年度に開始される「代理店業務品質評価制度」の運営に先立ち、委託代理店の態勢整備の状況等を定性的に評価・判定するための生成AIを活用したシステムを開発、2025年12月に運用を開始、代理店が評価基準をもとに自己点検した資料をAIに読み込ませ、達成状況を一次判定し、それを最終的に社員が確認することで、評価のバラツキを解消するとともに、評価にかかる時間の半減を目指す。 また、業務品質に応じた役割分担(委託業務の見直し、分業化による代手の圧縮)など、代理店評価や代理店手数料ポイントのあり方についても大胆な転換が必至で、保険会社と代理店の関係も様変わりする環境がすでに始まりだしている。規模が大きくても業務品質が低く、実務能力がなく、保険会社依存が高く自主性に欠ける代理店、あるいは顧客の信頼度の低い代理店は市場から撤退も必至となる環境の到来である。 (中) |
