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GuardTech~協業・共創の現場から(48)動き出した「企業リスクマネジメント」ー制度改革と産学連携で人材育成はどう進むのか

2026年04月21日
【プロの視点】

 企業リスクマネジメントの高度化は、もはや個別企業の課題ではありません。金融庁と経済産業省が合同で開催した「企業のリスクマネジメントの高度化に向けた検討会」でとりまとめた報告書が4月17日に公表されました。リスクマネジメントは企業価値向上と成長投資を支える基盤として位置付けられ、企業が不確実性の高い環境下でも持続的に成長していくためには、リスクを適切に把握し、戦略的に活用することが不可欠であるという認識が、政策レベルでも明確に示されています。

 これに関連し、金融庁が企業自ら保険子会社(キャプティブ)を設立しやすくする制度の検討を進め、2027年にも保険業法の改正案を国会に提出する方針との報道もありました(4月14日付日本経済新聞)。キャプティブは、企業が自社のリスクを引き受ける仕組みであり、グローバル企業を中心に海外では広く活用されてきました。日本でも導入のハードルが下がれば、企業はリスクをより主体的に管理し、保険に依存しすぎない柔軟なリスクファイナンス戦略を構築できるようになります。

 改めて認識しておくべきは「プロテクションギャップ」です。自然災害などによる損失のうち、保険などによって補償される割合は依然として限定的であり、多くの損失は企業や社会が自ら負担しています。キャプティブの活用は、こうしたギャップに対して企業が主体的に対応する手段の一つとも位置付けられます。これは単なる制度改正にとどまらず、日本企業のリスクとの向き合い方そのものを変える可能性を持つ動きと言えるでしょう。

 前回まで紹介してきた「ホケンノミライ2026」のセッションでも、企業リスクマネジメントの重要性は繰り返し指摘されました。自然災害や地政学リスクの増大、サイバーリスクの高度化などにより、企業を取り巻く不確実性は急速に高まっています。こうした環境のもとでは、保険手配にとどまらず、リスクコントロールやレジリエンスを含めた総合的な対応が不可欠です。

 しかし、日本企業の現状を見ると、こうした企業リスクマネジメントを担う人材や組織は十分に整備されているとは言えません。保険に偏重したリスク対応や、事後的な損失処理中心の管理など、構造的な課題も指摘されています。また、リスクマネジメントが経営戦略や資本配分と十分に結びついていない点も、日本企業に共通する課題の一つです。

 こうした課題に対し、GuardTechコミュニティでは、産学連携による企業リスクマネジメントの普及と産業化を目指し、「企業リスクマネジメント2.0検討会議(リスマネ2.0会議)」を4月より立ち上げました。この取り組みでは、企業リスクマネジメントを従来の管理業務としてではなく、企業価値向上や新たな事業機会の創出につながるテーマとして再定義することを目指しています。

 背景には、日本企業におけるリスクマネジメントが保険によるリスク移転に偏り、経営戦略や資本配分と十分に結びついていないという課題認識があります。一方で欧米では、リスクは経営責任の一部として統合的に管理され、投資判断にも組み込まれています。

 このギャップを埋めるため、「リスクマネジメントを『単なる管理』から『産業』へと進化させる」というビジョンのもと、理論整理、職種定義、教育プログラム、資格制度、カンファレンス開催などを一体的に進める構想が議論されています。

 特に重要なのは人材の問題です。企業リスクマネジメントを経営レベルで担うリスクマネジャーの役割は今後ますます重要になりますが、日本ではその職種定義や育成の仕組みが十分に整っていません。大学教育においても体系的に学ぶ機会は限られており、実務と学術の分断も課題となっています。

 リスマネ2.0会議では、こうした課題に対応するため、産学連携を基盤としたコンソーシアムの形成や寄付講座の設置、資格制度の構築などを通じて、人材育成の仕組みを整備していく方向性が共有されました。企業、大学、保険・金融機関がそれぞれの役割を持ち寄り、理論と実務を往復させながら人材を育てていくエコシステムの構築が目指されています。

 さらに、年内には「企業リスクマネジメント2.0」をテーマとしたスピンオフカンファレンスの開催も予定しています。こうした場を通じて議論を広げ、実務への実装を進めていくことで、企業リスクマネジメントの普及と高度化が加速することが期待されます。

 企業リスクマネジメントは、もはやリスクを回避するための守りの取り組みではありません。リスクを適切に管理し、戦略的に活用することで、企業は不確実性の中でも成長投資を進めることができます。その意味で、リスクマネジメントは企業価値創造の中核に位置付けられるべきものです。

 政策、制度、そして現場の実務が同時に動き始めた今、日本の企業リスクマネジメントは新たな転換点を迎えています。この動きが一過性のものに終わるのか、それとも新たな産業として定着するのか。今後の展開が注目されます。

 (GuardTechコミュニティ代表)https://note.com/guardtech2024

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