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GuardTech~協業・共創の現場から(52)「保険商品」から考えるのをやめてみる ー12のアイデアから見えた、これからの保険の役割

2026年08月25日
【DX・AI】

 「ハッカソン」という言葉、聞いたことはあるけれど、実際に何をやっているのかはよく分からない、という方も多いかもしれません。もともとは「ハック(Hack)」と「マラソン(Marathon)」を組み合わせた言葉で、チームでアイデアを出し、限られた期間で実際に動くサービスや試作品までつくるイベントです。

 この夏、第2回となる、あたらしい保険をつくるハッカソン「ホケンノカタチ2026」を開催しました。GuardTechコミュニティが主催し、参加者は約2ヵ月かけて新しい保険サービスを考え、実際に動くところまで形にします。今回は12チームが参加し、8月6日のDemoDayでは一次審査を通過した5チームによる最終プレゼンテーションが行われました。

 12作品の概要やピッチ動画、受賞結果などはGuardTechコミュニティの公式noteのレポート記事*で詳しく紹介しています。本稿では、12のアイデアから見えてきた「これからの保険の役割」を考えてみます。

https://note.com/guardtech2024/n/n013e0c3f75a8

◇「まだ保険になっていないリスク」

 12作品を並べてみると、テーマは多岐にわたっています。 高齢者の見守りや特殊詐欺があれば、ディープフェイク、AIエージェント、ペットとの共生、単身社会、Web3を扱ったものもあります。多くのチームが発想を既存の保険商品から始めていないことが窺われます。 

 例えば「ワンニャン住マイル」が着目したのは、いわゆるペット保険ではありません。ペット可物件を提供する不動産オーナーが抱える、原状回復費などへの不安でした。「AgentGuard」が扱ったのは、AIエージェントが誤った判断や取引をしてしまうリスクです。こちらは、まだ保険市場が十分に存在しているとも言えない領域です。

 先に「困っていること」や「気になるリスク」があって、そこからどうすればそのリスクを小さくできるのかを考える。それでも残る部分に保険を使えないか、と考えている。

 審査委員長を務めた篠原孝典弁護士が大会後に「まだ保険になっていないリスク」という言葉を使われていましたが、12作品を振り返ると、確かにそういうことだったのかなと思います。

◇保険は「事故の後」だけのものなのか

 もう一つ気になったのが、保険が登場するタイミングです。

 特殊詐欺をテーマにした「SAFi」は、被害に遭った後に保険金を支払うだけではなく、AIなどを使って詐欺の兆候を捉え、被害を防ぐところまで考えていました。

 「DeepCare」はディープフェイク被害を扱っています。AIによる早期検知から証拠保全、削除対応、弁護士相談や心理的ケア、費用補償までを一つのサービスとして考えています。

 保険金を支払う前にも、できることは結構ある。事故を予防したり、早く見つけたり、起きてしまった後の解決を手伝ったり。その先に保険による補償がある、という組み立てです。

 もちろん、こうした考え方自体が保険業界で初めてというわけではありません。事故や疾病の予防、健康増進、リスクコンサルティングなどは以前から取り組まれています。

 今回ちょっと面白いなと思ったのは、「既存の保険に何を足そうか」と考えた結果ではないことです。社会の中にある困りごとから考えていったら、予防や支援と保険が一つのサービスの中につながっていた。似ているようですが、出発点が違います。

テクノロジーファーストではない

 ハッカソンなので、AIやノーコード/ローコード、ステーブルコインなど、いろいろな技術が使われました。

 一次審査の結果を後から分析してみると、参加作品全体として、技術を使ってアイデアを動く形にする力はかなり高い水準にありました。ただ、決勝進出作品との差がより大きく出たのは、技術の使い方そのものより、社会の課題をどう捉え、それに対してどんな解決策を出したかという部分でした。

 考えてみれば当たり前なのかもしれません。AIを使うことから考えるのではなく、解決したいことがあって、そのためにAIを使う。

 一方で、AgentGuardのようにAIエージェントという技術が普及するから新しいリスクが生まれ、そこから保険のテーマが出てくるケースもあります。新しい技術は解決の道具にもなるし、新しいリスクを生む側にもなる。このあたりは、今後もっといろいろ出てきそうです。

◇「保険商品」をいったん脇に置いてみる

 保険業界に長くいると、「新しい保険を考える」と聞いただけで、どうしても既存の商品を頭に浮かべてしまいます。私自身もそうです。

 でも今回の12チームは、そこから始めていませんでした。

 社会や顧客の困りごとを見て、何がリスクなのかを考える。それをできるだけ小さくする方法を考えて、それでも残るものに保険を組み合わせてみる。

 そうやって出来上がったものを見ると、「こんなところにも保険が使えるのか」と思うものがいくつもありました。

 タイトルでは少し乱暴に「『保険商品』から考えるのをやめてみる」と書きましたが、もちろん既存の商品を否定したいわけではありません。

 ただ、たまには「保険商品」をいったん脇に置いて、まだ保険になっていない困りごとを探してみる。今回の12作品を見ていて、そんな考え方もありそうだなと思いました。

◇【追記】前回ご紹介したINID、その後

 本稿を書き終えた時点で海外から嬉しい知らせが飛び込んできました。前回の寄稿で、学生が保険・リスクマネジメントの新しいアイデアを競う「INID2026」決勝大会をご紹介しましたが、その国内大会で最優秀賞を受賞し、日本代表としてシンガポールの世界大会に派遣された慶應義塾大学チームが、世界第2位の好成績を収めました。1位は香港、3位はシンガポールだったそうです。

 さらに、日本のINIDにも「industry sponsor award」が贈られました。国内大会のINIDはまだ2年目ですが、参加した学生だけでなく、それを支える日本側の取り組みも評価されたことになります。

 前回の記事では、国内決勝を見ながら「学生だから出てくる発想がある」と書きました。それが日本代表として海外でも評価されたのは、実行委員の一人として素直にうれしく思います。詳しい大会レポートはこれからとのことなので、また機会があればご紹介したいと思います。

(GuardTechコミュニティ代表)

https://note.com/guardtech2024


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