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め・て・みみ ~金融庁、監督指針比較推奨販売のパブコメ回答を公表 ~代理店都合推奨の廃止、顧客意向重視・選択・理由・記録必須に

2026年09月01日
【ニュース】

 昨年12月に金融庁が公表した令和7年保険業法改正がらみの内閣府令(施行規則)案、監督指針案につき、本年1月30日締め切りでパブコメを募集、他の項目についてはすでに公表され、残る懸案の比較推奨販売については、ようやく8月28日にパブコメ回答(その結果と考え方)が公表となった。今回のパブコメは、従来認められていた代理店都合の推奨(ハ方式)の廃止と顧客意向を重視した比較推奨(ロ方式)にシフト明確化など乗合代理店実務への影響が大きく、133の個人や団体から合計759件もの意見・質問が寄せられていた。

 比較推奨販売関連の施行規則、監督指針の改正の施行期間については、「乗合代理店の実務や経営に与える影響等も考慮し、社内規程の改正や業務フローの整備、システム対応、募集人教育等の体制整備に要する期間として、円滑な対応が可能となるよう適当と考えられる期間を設定」するとして、2028年3月1日からの適用、公表日から約1年半の準備期間が設けられている(ただし前倒し対応が望ましいと明記)のが特徴だ。

◇多岐に論点の底に流れる金融庁の考え方のロジック

 今回のパブコメ回答の論点は多岐にわたる。顧客の最善の利益、全社比較が常に必要か、意向がない=お任せ顧客への対応、指名買い、意向推定、比較ツール、比較可能な同種の保険契約、、合理的かつ一定の具体性を有する基準や理由、共同募集、更改・継続契約、団体扱い、ウェブ募集、体制整備、証跡保存などの分類と対応関係、銀行窓販、二以上の比較可能な同種の保険契約、保険募集人の事務習熟度、保険会社の総合力・人材・営業体制・事故対応の差異など広範に及ぶ。

 ここで重要なのは、顧客が何を重視し、その意向に照らして、なぜその契約を提示・推奨したかを、後から説明できる募集プロセス・証跡・検証態勢を整えることが眼目だ。

 膨大なパブコメが寄せられた結果、今回の金融庁のパブコメ回答の論点の底には、1)意向の形成・明確化、2)意向に沿った選別、3)基準・理由の説明、4)記録・検証、というロジックで貫かれていることに留意して理解する必要がある。

◇「お任せ」顧客への対応

 実務上、顧客側から「お任せ」「おすすめは?」と言われた場合への対応も焦点となっていたが、その言葉のみをもって代理店が任意の保険会社の特定商品を推奨することは不適切であると明言するとともに、このようなケースでも、保険料水準や必要な補償内容など、顧客が重視し得る事項を丁寧に確認し、可能な限り意向の明確化に努めるプロセスが求められる。いうなればお任せはゴールではなく、追加確認のスタートだという認識が必要だ。

 その上で、把握した意向に沿って合理的な理由に基づき選別・提案を行う必要がある。また意向形成を促してもなお明確にならない場合は、当初意向・顧客属性・加入目的・既存加入契約・必要な補償内容から理由を組み立てて提案できる、としている。

 「おすすめを希望する」と顧客に言わせる話法や導線をあらかじめ用意することは潜脱として明確に禁止された。

 (No.14,15,21、22,23)

 全社網羅の見積・比較は一律には不要と明言するとともに、変わるのは、形式的な対応ではなく、理由の質・記録の質、「お任せ」対応としている。(No.24,25,48、72など)

◇使えない推奨理由、使える推奨理由

 実務上最も影響が大きい論点が、これまで現場で通用していた比較推奨理由の可否をめぐってだ。金融庁は、手数料水準、販売目標、保険会社からの便宜供与、または「特定の保険会社の事務手続きに精通している」といった代理店側の都合による商品推奨を厳しく牽制し、特定の保険契約を推奨する場合には、顧客の最善の利益を勘案し、保障(補償)内容や保険料水準といった客観的な基準・理由に基づくことが必須(No.6,77)としている。

 今後、推奨理由として使えなくなるのが、手数料水準・販売目標・便宜供与・資本/取引関係や経営方針・社内都合・事務都合、特定保険会社の事務に精通、募集人が取扱いに慣れている、募集人の経験・主観による「事故対応が良い」、「商品に差がないから」という提案理由など。(No.63,74,76,87)

 使える推奨理由としては、保障(補償)内容・保険料水準・特約・免責金額等の商品特性、事故対応は、事故受付時間・ロードサービス・示談交渉の有無・保険金支払い手続き・事故後サポート等と具体化すればOK。

 販売実績・ランキングなどは顧客がそれを重視する意向を示した場合に、商品直結事項と合わせて使用可。集計期間・対象・方法の客観性が条件。

合理的理由で1社に絞り込むこと自体は制度趣旨に反しない。

 理由が立たない場合は無理に絞らず、複数提示・比較説明・追加の意向確認へ。(No.63,77、80,86、449~452)

◇場面別の考え方

 場面別の考え方ではパブコメで繰り返し問われた項目で、指名買い、更改契約、取り扱い範囲の絞り込み、生保損保とも一社の場合、意向推定、手数料ポイント制度は解決されたか、等について考え方が示された。

 顧客が保険会社を指名してきた「指名買い」の場合、募集人の選別・提案が実質的にスキップされる場合、ロ方式の対応は直ちに不要だが、意向把握の過程で他契約に検討の余地があれば適切な対応が求められ、比較説明をすればイ方式は適用される。権限明示等の基本義務も残る。(No.26,27,289)

 更改契約については、「既契約の満期に伴う保険募集であることのみをもって、当然に比較推奨販売の適用対象外となるものではない」としつつも、実務上の負担を斟酌し、「顧客のリスク特性や意向の変化を確認したうえで、顧客の主体的判断により既契約と同条件での継続を希望する場合、直ちに他社商品との詳細な比較推奨(ロ方式)が求められるものではない。」としている。「一律に全商品の比較や詳細な分析を毎回求めるものではなく、顧客が継続の可否を判断できる分かりやすい説明が重要である。」とし、意向確認プロセスを適切に踏んだうえでの継続なら実務上の柔軟な対応を認めている。(No.95,110,114)

 手数料ポイント制度の問題は解決されていない。「規模・増収連動のポイント制が比較推奨を阻害する」などの意見には、「貴重なご意見として承ります」が中心で、制度への直接介入はせず保険会社側の代理店管理態勢の高度化と、記録の有無でなく、「推奨の合理性」をモニタリングで対応するスタンスだ。(No.193,194)

◇ウェブ募集、比較サイトへの対応に直結するインターネット募集

 デジタル代理店、ウェブ募集・比較サイトに直結するインターネット募集も完全に射程内としており、グループ会社と共同運営するサイト、バナー・検索連動・キャンペーン広告からの流入、特定商品申込ページへの直リンクはそれのみでは指名買いとならず、比較推奨の対象外にはならない。意向形成の過程・募集態様から実質的に特定契約への誘導になっていないかを個別・慎重に判断する。(No.286,292,293)

 また、「おすすめ」表示は法令上の推奨にあたるとし、「保険料重視の方はこちら」、などの項目別表示ですら提示・推奨に該当しうるため、該当すれば、商品概要と推奨の基準・理由を求められなくても表示・説明する義務が生じる。項目の内容、表示順・導線・掲載方法で恣意的誘導にならないことが条件でウェブが対面より双方向性が乏しいため「より慎重に」対応する必要すら指摘されている。(No.529)

 並び順の実質的な決定要因と画面に出す推奨理由が一致していない場合、パブコメ回答を踏まえ確定監督指針で明文で禁止された「本来の基準や理由等を告げない行為」、「主たる理由を告げずに他の理由を告げる行為」に正面から抵触する。(監督指針2"-4-2-9(5)(別紙3))

 このほか、単なる保険料比較・システム出力の提示だけでは意向把握・比較の履行にならない(No.33,88)としていることに留意したい。

◇提示・推奨する契約の概要と基準や理由の説明は必須

 提示・推奨する契約の概要と、基準や理由等は、顧客の求めの有無にかかわらず説明が必須で、求めに応じてでよいのは契約内容(詳細)だけで、聞かれたから答えるなどの運用は認められない。推奨する契約以外の契約がある旨の説明も必須だ。(No.70,533,534,538,539)

◇証拠の保存

 比較推奨販売の適切性を担保するための証跡保存について、金融庁は「一律の詳細な記録を求めるものではない」とし、必ずしも顧客の署名・押印付きの書面に限らず、また全件の詳細記録も不要とし、電子データやシステム入力記録、プルダウン方式の記録など、実務に応じた効率的かつ柔軟な方法も認められる方向性を示した。(No.153,156~162)

 ただし、「主な意向/把握方法/比較・選別の対象範囲/提示・推奨した契約/基準や理由/説明内容の概要」を事後的に検証できる精度で残す体制は必須だ。手段は意向確認シート・推奨判断結果シートの保存、システムのプルダウン入力+補足記録、ウェブなら表示履歴・入力ログで足りる。検証は全件でなくサンプリングなどのリスクベースでOKで保存期間は社内規則で合理的に設定。(No.160,161,541)

 また、「特定のシステムや選別ロジックの導入を一律に求めるものではない」とも明記し、高額なシステム投資が難しい小規模代理店であっても、事後的に確認・検証できる態勢がキッチリと管理されていれば、Excel等を用いた独自の管理方法でも運用は可能としている。(No.153,155, 160)

◇業態・募集形態別=チャネル別に論点を読み込む

 以上の、全体的な金融庁の考え方やロジックの基本を理解したうえで、回答で示された多岐にわたる論点と考え方についても、業態・募集形態別に、それぞれの立場で、パブコメ回答の読み込み、論点の絞り込みとそれを踏まえた実務面の改善対応が必要になる。自動車ディーラー、生保・損保中心乗合代理店、中小・小規模代理店、保険ショップ、ウェブ完結・通販代理店、電話募集・コールセンター更改中心代理店、企業内代理店、共同募集代理店、兼業代理店、専属化検討代理店、フランチャイズ本部、保険会社代理店管理部門などそれぞれの立場で抱える課題、関連の論点と実務上見直すべきテーマは当然異なってこよう。実際の比較推奨に関する監督指針等の施行までには、システム対応や態勢整備のために1年半の猶予が設けられたが、前倒しでの具体化も併せて求めており、今後どのように臨むのかそれぞれの保険会社、代理店の対応いかんが問われるところとなっている。

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