| inswatch新着記事 | 一覧はこちら |
|---|
め・て・みみ~比較推奨「ハ」方式廃止にみる業界と行政のスタンスの違い
|
2026年09月22日
【ニュース】
9月18日、保険の未来を再定義鵜を掲げ、保険とプロテクション商品をカスタマージャーニーに組み込む、グローバルなインシュアテック企業ボルトテック(シンガポール)、その日本法人のボルトテックジャパン主催のセミナー「【保険業法改正×売上拡大】保険業法改正を成長機会に変える~現場を熟知した専門家が実務に沿ったアドバイス~」(会場、東京・丸の内三菱ビル)で開催され、業法改正対応をどうとらえるかと同社のプラットフォーム戦略の展開事例が知りたくてこれに参加した。 当日のセミナーは3部構成で、第一部は、藤田章夫(週刊ダイヤモンド副編集長)による「なぜ「ハ方式」はなくなったのか!~保険業界で何が起き、保険販売はどこへ向かうのか」、第2部は、篠原孝典(弁護士、ボルトテックジャパンリーガルアドバイザリー)による「保険業法改正の最新動向と実務対応~比較推奨・意向把握における実務対応~」、第3部は、安斎亜希子(事業開発統括部長)、尾崎仁(事業開発部長)による「ボルトテックが実現する次世代保険販売プラットフォーム~コンプライアンス対応から販売力強化・CX向上へ~比較推奨・意向把握対応、海外での組込型保険活用事例紹介」だった。 いずれのパートも興味深かったが、保険業法改正でもとりわけ懸案だった比較推奨販売の監督指針パブコメ公表に絡み、業界と行政のスタンスの違いで際立ったハ方式廃止はなぜ起きたのか、についての藤田週刊ダイヤモンド副編集長による鋭い分析視点だ。以下、講演から興味深い、いくつかのポイントをピックアップして紹介する。 1)ハ方式はなぜ廃止されたのか 生保業界で複数の保険会社の保険商品を取り扱う乗合代理店が、手数料の高い保険会社の商品を優先して販売していたことが問題となり、2014年業法改正(2016年施行)では、代理店(保険募集人)に意向把握、情報提供、体制整備の3つの義務が新たに設けられ、このうち情報提供義務にハ方式を含む比較推奨ルールが導入された。 <ハ方式はなぜ設けられたか> ハ方式はそもそもなぜ設けられたのかでは、10年前の2014年業法改正(施行は2016年)で情報提供義務につき、イ(比較すべき事項をもれなく説明)、ロ(顧客意向に沿って商品を選別し、推奨)、ハ(自社独自の推奨理由・基準に従って商品を選別し、推奨)の3方式の一つとして組み込まれたものだ。 当時、ハ方式が認められた背景には、・顧客がそれで良いと言えば、禁止する必要性がない・あらゆる規模の代理店にベストアドバイス義務を課すのは厳しすぎる・零細代理店への救済等があり、これらに配慮しルール化されたものだった。 <形骸化・固定化、悪用に危機感から後始末> その後の10年、保険業界において、保険料不正請求事案やカルテル事案、情報漏洩事案等の顧客本位の業務運営と全くは相いれない不祥事・不適切事案が相次ぎ発生したことで、ルールの本質とは相いれない運用実態になってしまった。すなわち10年間で完全に形骸化・固定化、自分都合で悪用され、大規模不祥事の温床になったという強い不満・不信と危機感と憤りが金融庁側にある。いわば10年前の後始末をつけることが今回のハ方式の廃止の背景にある。 今回の改正では代理店に行為規制をかける改正のため、可能な限り具体的に丁寧に回答しているのが特徴だ。またハ方式廃止の適用開始までの期間も配慮し2028年4月からと1年半の準備期間を設けている。 <テリトリー制の根拠とその解消> テリトリー制は、ディーラーや募集人の数が増加し、顧客に適切かつ正確な保険商品・サービスを届けるためには店舗毎に教育する担当損保を決めることが合理なため、店舗毎の「教育担当損保制=テリトリー制」として導入されたものだ。また、自由化以降、商品に差ができたため、教育担当損保の商品を採用するにあたり、ハ方式を採用したもの。 テリトリー制の根拠は、「保険会社から販売を委託された商品は取扱可能な商品となります。また、例えば、社内規則において、店舗に応じて取扱商品を決めている場合には、その範囲内となります。」(2014年改正保険業法パブコメ510)が根拠とされた。乗合保険会社の1社が代表し、店舗単位で支援や指導を実施、他の保険会社の営業担当者は立ち入らない、推奨損保に選ばれるために、過度な便宜供与を実施、実態と乖離した独自の推奨理由を説明するという問題を生じていたが、ハ方式の廃止で今回その根拠自体が解消となった。 <自動車保険選択の意向の有無、消費者調査で覆す> 「自動車保険はどこも同じ商品なので、顧客に商品選択の意向などない!」という損保業界側の言い分に対し、金融庁は、損保協会に「消費者アンケート調査」を求め、その結果、実際には、消費者には商品選択の意向があることが判明、上位にアフターフォーローの体制、商品に付帯のサービス、保険料水準などが来るなどの事実を突きつけた。 <ハ方式存続求める業界の多くの声と金融庁の決意・覚悟のギャップ> また、業界内や実務の現場には実務負担が重すぎる、業務が回らなくなる、最善の利益義務に加え、過度な便宜供与も禁止したため、しっかりモニタリングすれば防げるのでは?などのハ方式廃止に反対する声も多かったが、金融庁のスタンスとしてはハ方式を残せば、代理店都合で商品を絞り込み、特定会社への誘導問題が再発する、本来と異なる推奨理由があったとしても露呈しにくい、ゆえに再発は絶対にさせないという強い意思表示を明確にし、顧客本位の業務運営を主眼とし改正金融サービス提供法の成立も踏まえ、歪んだルールの完全廃止を断行したものだ。 2)パブコメに対する生損保での対応の違い 10年前の生保主体の業法改正時のパブコメは405件、今回の損保主体の改正時のパブコメは759件と膨大だったが、生保ではあらかじめ協会ベースで論点の交通整理をし提出したのに対し、今回の損保では非常に細かい現場実務の疑問がストレートにそのまま大量に出され、この損保の質問の仕方が、抜け道探しなどととらえられ、金融庁側のハードルを高くし態度を硬化させる結果となった。 3)新ルールにおける重要ポイント 監督指針に書かれている具体的要件の理解が重要だ、ロ方式は意向把握が重要。 ・顧客の最善利益と提示、一般人の合理的期待に当てはまる商品を事前に丁寧かつ明確に聞いて提示 ・顧客の意向が不明確、お任せでも、それを理由に適当に絞り込むことは禁止、顧客自身に意向を形成させるよう促さなければならない。顧客の意向が不明確ならば、意向の形成を促してほしいとしている。 ・損保における意向推定の禁止、パブコメ結果で追加された「意向推定(顧客の属性や生活環境から意向を推定すること)」は第2分野の損保での適用は明確に禁止・除外された。 ・証跡管理は、すべてのやり取りを録音・記録する必要はなく、意向が変わったターニングポイントを記録すればよい。 このほか、満期更改契約の説明厳格化(変更点あれば多少にかかわらずしっかり説明・確認)、過去の販売実績やランキングを使った推奨の禁止、代理店手数料ポイントにつき、手数料率の高い会社ばかり推奨することがないよう、直接の価格統制は行わないものの、監督指針を通じ、保険会社に「売上規模ではなく、品質・コンプラ重視の手数料体系」へシフトするよう指導。 4)代理店との適切な関係性の構築、保険会社の監督責任を問う 今回の改正は、代理店以上に保険会社へ矛先を向けるものだ。金融庁は一連の不祥事問題の行政処分等でも「代理店との適切な関係性」の構築を重視するスタンスを明示。免許事業を営む保険会社に対し、一層の代理店に対する教育・指導・管理監督を求め、適切な関係性がもてない代理店に対しては委託契約解除すら求めている。また「過度の便宜供与の提供」を理由に、代理店への教育・指導・管理を怠ることは許さないとしている。 5)過去の好事例活用とルールの本質理解の重要性と今後の見通し 今回のパブコメ結果は、膨大で多岐にわたり具体的にどうすればよいか、年内を目途に損保協会が現在進めている比較推奨販売運用のガイドライン作成を待つことになろうが、とりあえず手掛かりとしては、金融庁が2017年2月と2020年6月に公表した代理店ヒアリング調査の好事例が、規模や特性に応じた体制整備の基準となる。 監督強化と規制厳格化で、形だけの体制整備しかできない代理店、看板だけの乗合代理店は市場から淘汰・選別され、構造転換を迫られる。ルールの本質を理解し、顧客本位の体制を整え」保険会社と健全なパートナーシップを組める実力のある代理店が選ばれ成長していく時代となる。 (中) |
