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生命保険ビジネスの「みらい」展望(3)企業と社員の成長を支援する―共創で考える企業の福利厚生
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2024年12月24日
【DX】
筆者は住友生命保険相互会社でデジタルとデータを活用しながら企業や自治体との共創を行い、新たな顧客価値を創造する仕事を担当しています。本連載では、生命保険会社の新たな顧客価値創造分野である保険以外のビジネスドメイン「非保険領域」に関する内容をテーマとしています。 筆者はデジタルやデータを活用した顧客価値向上やビジネス発想研修を社内や社外企業、自治体向けに多く実施しています。その関係で企業の人事労務関係の管理職と意見交換を行うことがあります。 「社員の健康は重要だとわかっています。でも、どこから手をつければいいのか……」 「若手社員の就業意欲が気になっています。モチベーションを落として辞めていくことが多いのです。仕事の負荷を下げるように会社で徹底しているのですが……」 このような声を聞きます。こうした話をきっかけに、筆者たちは企業の社員向けに健康経営支援ができるのではないかと考え、デジタルやデータを活用して取り組んでいます。 ◇社員の状況と企業の課題 多くの企業では従業員の健康管理の重要性を理解しているものの、どう取り組めばよいか悩んでいます。例えば、ある小売チェーン店で、シフト制で働く店舗スタッフの疲労度が高くなり、退職が増えている傾向があるとします。この場合、スタッフの疲労がどの程度蓄積しているのか、どのようなシフトパターンが体調不良につながりやすいのかなど、具体的な分析ができれば予兆把握ができるのですが、これができていない、などです。 別のケースとして、ある飲食店チェーンで、新規出店の加速による従業員の残業時間増加とメンタルヘルスの悪化が関係しているように思えるが、その関係が分からず対策を打てない、などです。このような問題に対し、企業向け健康支援サービスを通じて解決を目指せないかと考えています。 ◇企業の健康経営を支えるデータ活用 多くの企業では、健康経営の文脈で、コンサルティング会社や社員向けサービス企業の支援を受けながら、自社の持つさまざまなデータを統合的に分析し、社員を守る施策につなげる活動を始めています。健康診断データ、労務データ、社員の健康増進活動データなどを組み合わせることで、より実効性の高い施策を導き出すことが可能です。 小売チェーン店の例では、データ分析によって「シフトの過密度が高い店舗ほど休憩時間が十分に取れておらず、特にアルバイトスタッフの疲労度が高まっている」ことが分かった場合、休憩時間の確保と店舗オペレーションの効率化を組み合わせた改善策を導入することができます。これにより、スタッフの体調管理が改善されるだけでなく、接客サービスの質の向上にもつながるでしょう。社員の満足度向上は、顧客満足度の向上につながります。 飲食店チェーンの例では、「売上目標達成のプレッシャーが強い店舗ほど従業員の有給休暇取得率が低く、若手スタッフの離職率が高い」ことが分かった場合、計画的な休暇取得の推進とキッチン業務の標準化による作業効率化を実施することで、従業員の健康状態の改善と顧客満足度の向上が期待できます。 ◇デジタルを活用した新しい健康経営支援 健康経営支援で特に重要なのが、「継続的な取り組み」を支える仕組みづくりです。これには「スマートフォンアプリを活用した健康増進プログラム」などが役に立つと考えられます。機能として、部署対抗の歩数競争や、チームでの健康ミッション達成など、職場のコミュニケーションを活性化させる仕掛けが多く備わっているものが多いと思います。 筆者もこのような健康増進プログラムの開発にデジタルやデータ面の関係者として関与しました。「職場の仲間と一緒だから続けられる」「他部署の人との新しいつながりができた」という声が多く寄せられ、導入後も高い継続率を維持しています。また、達成時のインセンティブとして、コンビニエンスストアやコーヒーショップのチケットだけでなく、会社独自の福利厚生ポイントや地域商品券を用意することで、地域経済への貢献にもつなげることができていると思っています。 ◇企業ごとの課題に応じた価値提供 業種や企業規模によって、健康経営の課題や必要な支援は大きく異なります。例えば、複数の工場を持つ製造業では、各事業所の健康課題の「見える化」が必要です。事業所ごとの特性に応じた健康経営の施策を考え、会社全体での健康経営の底上げにつながるプログラムを開発する必要があります。 また、運送業であれば、乗務員の健康管理と事故防止を組み合わせたプログラムが喜ばれるでしょう。健康リスクの早期発見と予防的な対応により、安全運行の実現に貢献できます。具体的には、睡眠の質やストレス度を可視化し、労務管理と連携することでデジタル化の価値を高めることができます。 ◇予想しなかった「新たな気づき」 健康経営支援プログラムを企業向けに提供する中で、予想していなかった発見もありました。多くの企業で、健康増進プログラムをきっかけに部署を越えた交流が生まれ、コミュニケーションが活性化するケースが多いのです。この効果をさらに活用し、例えば社員の家族も参加できる健康イベントを運営することで、社員のエンゲージメント向上につなげることができます。「家族ぐるみで健康づくりに取り組める」「子どもと一緒に運動する時間が増える」という声が寄せられることも期待できます。 企業向けの健康経営支援サービスは、単なる福利厚生の枠を超え、企業価値の向上に直結するものです。だからこそ、生命保険会社はデジタルとデータを活用しながら、企業と社員の持続的な成長を支援していくことが重要なのです。 *次回は、次世代を担う人材をどう育てるか、デジタル時代の人材戦略を事例を交えながらご紹介します。 (住友生命保険相互会社 エグゼクティブ・フェローデジタル共創オフィサー デジタル&データ本部 事務局長) |
