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生命保険ビジネスの「みらい」展望(5)人生100年時代の資産形成を支える ―金融リテラシーとデジタルの融合
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2025年01月28日
【DX】
筆者は住友生命保険相互会社でデジタルとデータを使いながら企業や自治体との共創を行い、新しい顧客価値を創造する仕事を担当しています。本連載では、生命保険会社の新しい顧客価値創造領域である保険以外のビジネスドメイン「非保険領域」に関する内容をテーマにします。 先日、筆者と一緒に仕事をしているZ世代の若手職員と話をしました。 「保険って『もしも』のためのものです。でも私たちの世代が不安なのは、これから長い生活していけるかなんです。会社がずっと続くのか読めない時代ですし、、、」 「老後の資産形成も大切ですが、それまでの収入をどう確保し続けるかも大事です。副業やスキルアップの機会など、生涯を通じた稼ぐ力のサポートも欲しいです。」 これらは生命保険会社が向き合うべき課題を象徴していると思います。人生100年時代にどのように生きていけばよいのか。長寿という一般には祝福すべきことには、大きな課題もあるのです。資産の形成や運用だけでなく、原資となる収入を持続的に確保することも重要なテーマです。 ◇変わる資産形成 かつての日本人の資産形成は、預金が主流でした。しかし、長期化する低金利環境の中で、現在では、そのように思う人は少ないでしょう。特に若い世代の間では、資産形成に対する考え方が変化しています。インデックス投資への関心、つみたてNISAの活用なども盛んになっています。しかし全ての人がこのような資産運用に積極的ではないと思います。気にはなるが、やっていない人も多いことに着目することが重要です。資産形成の必要性は理解していても、具体的にどう行動すればよいのか分からない。筆者たちの消費者調査でも、そのような傾向が出ていました。「預金では増えない、ので、NISAが良さそうだけれども、どう加入したら分からない。だから、銀行口座に置いたままにしておこう」こういうことが多いことに気づきます。 このような状況の中、生命保険会社には強みがあります。「長期的な視点でお客様と向き合える」ということです。例えば、一部の生命保険会社では、保険と資産形成を一体的に考える顧客提案をしています。死亡保障や医療保障といった「守りの機能」と、資産形成という「攻めの機能」を、人生の各ステージに応じて最適に組み合わせていくのです。そこで顧客向けの価値となっているのが、デジタルツールを活用した「見える化」です。お客様の現在の資産状況、将来の目標、そこに至るまでの道筋を、分かりやすく可視化し、複雑な金融商品の仕組みも、会話型のシミュレーションで理解を深められるように工夫しています。 ◇金融教育とパーソナライズアドバイス しかし、ツールの提供だけでは十分ではありません。重要なのは、金融リテラシーの向上を目的とした支援です。そのためには、単なる商品説明ではなく、経済の基礎知識から、投資の考え方、リスク管理まで、体系的な学びの場を提供する必要があります。例えば、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッドな学習環境などが有効でしょう。基礎知識はオンデマンド動画で、実践的なワークショップは少人数のグループセッションで行う。それぞれの良さを活かした設計が顧客体験価値を高めるでしょう。 もう一つの重要な取り組みが、アドバイザリーサービスの高度化です。従来の対面相談は、アドバイザーの経験則に大きく依存していました。しかし今、データ分析とAIの活用により、より科学的なアプローチが可能になっています。例えば、お客様の年齢、収入、家族構成といった基本情報に加え、リスク許容度、将来の目標、さらには価値観まで含めた総合的な分析を行うことで、より精緻で個別性の高いものとなるでしょう。 大切なのは「人とテクノロジーの適切な役割分担」です。データ分析は意思決定の補助ツールであって、最終的な判断は人間が行う。その原則を常に意識すべきです。 ◇フィナンシャル・ウェルビーイングの実現 生命保険会社は、従来の金融サービスの枠を超えた新しい取り組みを展開していく必要があるでしょう。単なる資産形成ではなく、人生100年時代のキャリア設計、学び直し、健康投資まで含めた、包括的なライフプランニングが、今の時代に必要とされています。 例えば、50代での起業を考えているお客様向けには、必要な資金計画に加えて、スキル形成のためのリカレント教育プログラムの提供を検討すべきです。具体的には、オンライン学習プラットフォームと提携し、経営知識やデジタルスキルの習得機会を提供しながら、段階的な資金準備と能力開発を同時に進められる仕組みの構築が必要だと思います。 また、40代で新たなキャリアにチャレンジしたいというお客様向けには、職種転換に必要な資格取得支援と、その期間の生活を支える積立型保険を組み合わせたプランの開発をもニーズがあると思います。将来的には、キャリアコンサルタントとの定期的な面談も含めた、転職に向けた総合的なサポート体制の確立も考えると良いと思います。 60代以降も継続的に収入を得たい方々に向けては、専門性を活かしたフリーランス活動や、地域コミュニティでの新しい働き方の提案など、多様な選択肢を用意していく必要があります。これらと連動した資産活用プランにより、セカンドキャリアへの円滑な移行をサポートする体制の整備を検討することも必要でしょう。 資産形成支援は、単なる金融商品の提供ではありません。それは、一人ひとりが望む人生を実現するための土台づくりです。人生100年時代において、生命保険会社に求められる役割は大きく広がっています。保障機能の提供者から、人生の伴走者へ。その変革に向けて生命保険会社は変化する必要があると思います。 *次回はデジタルで売るということ―新しい保険販売のかたちについてご紹介します。 (住友生命保険相互会社 エグゼクティブ・フェローデジタル共創オフィサー デジタル&データ本部 事務局長) |
