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AIエージェント時代の消費者と保険会社(3)契約後から解約までーAIエージェントが進化させる保険顧客対応
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2025年07月08日
【DX】
生成AIが身近になった今、いたるところで「AIエージェント」という言葉を耳にすることが増えました。一方で、AIエージェントによって私たちの生活や仕事が具体的にどう変わるのかはまだ見えにくく、戸惑う人が多くいると思います。本連載では、そういったモヤモヤを5回にわたって考えていきたいと思います。 第1回は、AIエージェントが「保険会社」と「お客さま」の関係をどう変えていくのかの全貌を考えました。第2回は、具体的な保険販売がAIエージェントによりどのように変わるのかを見てきました。 第3回となる今回は、保険販売後の契約変更や顧客フォロー、解約・満期、そして保険期間の満期後まで、保険契約の始まりから終わりまでの一連の流れにおいて、顧客対応が具体的にどのように進化するのか、実例を交えて詳しく見ていきましょう。 ◇保険契約後のアフターフォロー 保険契約が完了すると、アフターフォローが始まります。従来は保険に加入いただいた後に生じたお客さまのライフイベントの変化について、保険担当が定期的にコンタクトすることで知ることができたり、変化があったお客さま自身が必要な手続き(例えば住所変更)を考えて、自ら保険会社に連絡することしかできませんでしたが、お客さま側のAIエージェント(前回 АI to AI時代には、お客さま側にもAIエージェントが付き、保険会社側にもAIエージェントが付くことを説明しました。)は、お客さまのライフイベントの変化を途切れることなく正確に把握し続けます。 たとえば、住所の変化をお客さま側のAIエージェントが察知すれば、保険会社に自動的に住所変更を申請。保険会社側のAIエージェントはこれを受け付け、マスターファイルを新住所に変更して、新住所の記載された保険証券を送付します。 単なる住所変更に留めず、住所が都心から郊外の一軒家に引っ越したようなケースでは、保険会社側のAIエージェントが変更前と変更後の住所を見て、担当者に「ライフイベントの大きな変化があったかも知れません、半年会っていないのでコンタクトを取ってみましょう!」と言ったサジェスション(提案)を行うことも考えられます。 保険の販売が難しい場合でも、引っ越し先の人気のある公園や、子連れに優しい飲食店などの情報をまとめて、お客さまにお渡しするようなことでも良いでしょう。 子どもの進学や就職時期になれば、こども保険や収入保障の追加を推奨し、必要書類や手続き方法は保険会社のAIエージェントが担当者をサポートします。 お客さまは手間をかけずに、ライフイベントの変化に応じてその人に合った最適な情報を受け取り、疑問点はAIエージェントがリアルタイムで解消できます。保険がパーソナライズされ、さらに難しくなっていくことが考えられる中、お客さまがいつでもリアルタイムに質問を解消できるAIエージェントは必ず必要になってくるはずです。 担当者の負担を減らしつつ、お客さまの安心安全の顧客体験価値を同時に実現することができます。 ◇事故対応:ストレスフリーの手続き 自動車事故や損害保険の請求時、保険金や給付金請求時に従来は請求方法の検索からはじまり、保険適用範囲の確認、コールセンターに電話、写真送付、書類記入、診断書を病院に持参するなど、お客さまには多くの手続きと、それに伴う多くの疑問の解消が必要でした。 実際、私も先日骨折をしたため、保険会社に申請しましたが、忘れた頃に給付金請求書が届き、その診断書を病院に持っていかなければなりませんが、時間が合わず1ヵ月程度そのままにしてしまっている状況です。 お客さま側にAIエージェントを導入し、事故を感知することで、保険会社側のAIエージェントに事故が発生したことを伝えます。 保険会社側のAIエージェントは自動車事故の手順を確認して「ユーザーに警察に連絡した後、事故現場の写真を撮るように伝えてください」と答え、ユーザーはスマートフォンのアプリ上で事故現場の画像をアップロードするだけで、損傷のAI判定と補償範囲のシミュレーションを即時に実行できます。必要書類はAIエージェント同士がやり取りすることで、自動生成され、電子申請書としてそのまま提出可能です。申請に足りない情報だけ、お客さまのAIエージェントとユーザーに直接問えばいいので、お客さまは手続きに関する負担は大幅に減り、AIエージェントを持っている保険会社とそうでない保険会社ではお客さまが保険会社を選ぶ際の理由として大きくなってくるでしょう。 ◇健康増進プログラム:動機づけと継続的な支援 予防医療と保険金給付金の支払い抑制等の観点から、保険会社各社は健康増進プログラムを提供していますが、まだまだアップデートしていくことができる部分があります。 健康増進プログラムに加入している、お客さま側のAIエージェントが日々の歩数、心拍数、睡眠データをリアルタイムで分析し、保険会社が定めた運動目標を下回った場合に適宜アドバイスとして「本日の目標の10,000歩に1,500歩が足りません。一駅前の〇〇駅で降りて自宅まで歩くと達成することができますよ。頑張って!」などのサジェスション(提案)を自律的にしてくれるようになるでしょう。 定期的にパーソナライズされたフィードバックやアドバイスをチャットや音声で送り続けることで、なかなか自分一人では行動変容することが難しかったお客さまにとって、まるで口うるさかった母親のように、運動や健康を促進するための手伝いをしてくれるはずです。背中を少し押すと頑張れるお客さまに健康習慣を定着させ、長期的な疾病リスクの低減と顧客満足度の向上を両立できるはずです。 ◇解約・満期:次の機会を生む顧客接点として捉える 少子化が進む中、顧客接点の1つ1つを大事にしていかなくてはならなくなっています。契約期間の満了や解約時も重要な顧客接点の1つです。 繋がりにくいコールセンターをAIエージェント化することはもちろん、満期の数週間前からお客さまの契約内容とライフステージをヒアリングさせていただき、その後も安心して生活を送っていただけるかどうかを評価し、最適な再加入プランを自動提案します。 ご年配で子育ても終わり、保障が要らなくなっているかもしれません。そういった方には新しい趣味や体験の提案、コミュニティの紹介を、保険会社側のAIエージェントが提案して、引き続き顧客接点ができていれば、お子さんやお孫さんからの追加契約をいただけるきっかけになるかも知れませんし、関連サービスをご案内できるチャンスにもなり得ます。 ◇まとめ 第3回では、契約後から解約・満期時までの顧客体験を具体的な切り口で見てきました。AIエージェントが日常的な業務を担い、人は共感や最終判断といった本質的な価値に集中できる仕組みが、顧客満足と業務効率化を同時に実現するでしょう。次回第4回では、AIエージェント時代の保険会社のあるべき姿について深掘りをしていきます。ご期待ください。 (大手生命保険会社勤務) |
