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め・て・みみ ~識者会議報告書が今後のプロ代理店に及ぼす影響
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2024年07月16日
6月25日提出された有識者会議の報告書が出された。 https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/houkokusyo.pdf *その概要→https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/gaiyou.pdf これを踏まえ金融庁は、今後、金融審議会等の場に移し、法改正も含め具体的な検討に入る。損保にとどまらず、便宜供与の在り方については、生保でも問題視され、過度の広告料支援などにつき、たとえばFPパートナー問題としてすでに金融庁は調査に乗り出している。また、損保の保険料調整問題は、団体扱いなど企業内個人の分野でも問題視され、こちらも現在調査中とのことで、旧来の取引慣行の根が深いことを物語る。 いずれにしても長らく続いた企業論理を優先し顧客を軽視してきた保険業界の古い取引慣行などの業界体質、いわゆる旧体制は、崩壊することは必至だ。 代理店の在り方も、営業優先・シェア市場できたこれまでの在り方が根底から覆される。顧客起点と相いれない営業目標や予算の建て方、代理店手数料ポイント制度、さらには代理店への過度の便宜供与の在り方なども見直しが求められる。本年はまさにその過渡期にあり、現場においては、しばらくは混乱状況が続くだろうが、保険会社の経営の基本スタンスは大きな転換を求められている。規模、増収面偏重の評価システムから、業務品質、代理店としての自立・実務能力を基準とした評価スタイルへの変更も必至だ。 同時に、この機に、保険会社は適切なアンダーライティング機能が強く求められるところとなる。よりプロフェッショナル性が求められることで、代理店政策も大きな転換を余儀なくされるのではないか。 有識者会議は、業法で予定している保険会社による代理店の管理・監督が効かなくなっている巨大・大規模代理店の出現で、保険会社との力関係が変わり、コントロール・チェックが効かなくなった、そのため、これら代理店を中立の第3者評価機関を設けて規制する方向を打ち出した。当然大規模代理店に対する業務品質基準等が厳格に規定され、また保険会社による過度の便宜支援の在り方も大きく変更され、また企業代理店に対しては、特例措置の廃止により、代理店の自立度・実務能力を適正に検証される方向への転換は不可避なところから、兼業代理店、企業代理店等の大規模代理店の選別淘汰・リスクマネジメント態勢整備が一挙に進むことになろう。 今後は、すなわち業務品質が高くガバナンスを効かせたプロフェッショナル度の高い代理店と、品質や態勢整備で、対応がとれない代理店とに明確に分かれていくのではないか。 このように大規模代理店・兼業代理店と保険会社の間の関係の見直しが劇的に進む新たな環境の到来は、専業のプロ代理店にとってはどのように影響するのか。 規模や増収面に偏重した従来の保険会社の代理店チャネル政策、手数料ポイント制度の変更を伴うことは間違いないだけに歓迎すべき動きと映るかもしれない。 しかし、業務品質重視とはいえ、これまでの業務品質の項目と言えば早期更改等に限られ、顧客からの満足度など定性的な要素は加味されてこなかった。今後は、業界の英知を集め、標準化・共通化した業務品質の中身こそが問われる時代に入った。例えばPDCAできちんと業務が回せているかのチェックとか、個人情報漏洩リスク等のサイバーリスク対応上、顧客の個人情報管理・保護の仕組みが整っているか、情報提供をきちんとしているかなど、より突っ込んだ代理店の経営の中身が問われることになる。 こうしたことは、プロ代理店と言えど規模に関係なく、あらゆる代理店のプロフェッショナル性、きちんとした業務品質を備えているかを、客観的に評価してもらう時代を迎えつつあることをを意味する。 こうした中で、顧客起点の・価値創造型の代理店経営を具体化するには、要請される課題が多く、また例えば損保でいうなら従来の基幹種目の自動車や火災が厳しい収益環境の下で、顧客を守るために現場を預かる代理店が今後どのような活路開拓・社会的ソリューションの提供、DX活用のサービスの高度化対応をしていくのかも問われる時代となっている。より代理店がプロフェッショナル性を発揮し、主体的にマーケットにかかわり、自らの顧客・コミュニティのお役に立てる立ち回り方が求められてくる。 地域や限定分野で特化を発揮してコンパクトスタイルで展開する道もある。ただこうした自主独立で代理店経営を営む方々も情報の共有、大災害時の地域密着ゆえの限界性を克服するためのBCP広域相互連携協力態勢構築を含め、代理店間の緩やかなネットワークによる協力関係作りは欠かせない時代となっている。生成AIを今後の代理店経営に如何に活かしていくかをはじめ、DXの有効活用事例の自主的交流マーケットの創出なども求められるところとなろう。 また今後、ガバナンス・商品・サービス管理・人材確保・教育と営業・顧客関係維持という機能の切り分け、代理店の機能分化も活発化しそうだ。例えば、流通業界にみるチェーンストア方式だ。本部と現場で役割分担をし対応する方式だ。広い商材を扱うには単体では困難なので、こうした仕組みも考慮されよう。 ただし、代理店ビジネスの根幹には、自分の顧客に対し主体的に責任を持つには独立自営でいたい、というのがプロ代理店のマインドだけに、米国で見られるクラスター代理店のような独立代理店のまま組合型組織化する方式は、復代理が業法上認められない現状では、独立代理店を放棄し、一旦社員身分・支店等の方式での対応を取らざるを得ないが、こうした方式では実質的にどこまで個々のメンバーの独自ブランドを尊重できるのかも課題だ。 保険会社が大きな経営戦略転換を図り、代理店との関係を見直す中で、保険会社における多面的な人材流出も進むことは間違いないが、今後、保険会社が直接出資し販社を作るのではなく、プロフェッショナル性を売りにした独立の代理店支援会社が提携した代理店を支援する試みも活発化してくるのではないか。 (中) |
