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GuardTech~協業・共創の現場から(28)~東京海上日動が「リバースメンター制度」を導入
2024年08月20日
東京海上日動火災保険がこの10月から、若手社員が直接関わりのない支店長や部長に逆指導する「リバースメンター制度(リバースメンタリング)」を開始する、という日経新聞の報道がありました(8月16日)。 従来のメンタリングは、年上の社員がメンターとなり、年下の社員(メンティー)を指導しますが、リバースメンタリング(RM)はメンターとメンティーの関係を逆転させ、年下の社員が年上の社員を指導するものです。 東京海上日動では、まず第一弾として、24年度の新任部長・支店長を対象とし、自身が若手社員と話してみたいテーマなど社内掲示板で公開、若手社員がそれをみて、助言したい、話をしてみたい部長、支店長を選ぶことから開始し、マッチングしたペアで月1回1時間を目安に対面もしくはオンラインで面談を行うとのことです。 ペアリングは事務局が若手の応募目的なども勘案して最終決定するそうですが、新人からのメンター応募もあるなど反響は上々のようで、来年度はすべての部長、支店長に対象を広げることも検討するそうです。 RMの嚆矢は米国のゼネラル・エレクトリック(GE)とされています。元CEОのジャック・ウェルチ氏の発案で若手社員をマネジャーのメンターにする制度を導入しました。当時急速に普及が進んでいたインターネットを使いこなしていた若手のノウハウを管理職に学ばせるのが目的で、ウェルチ氏自身も自身が導入した制度を活用してインターネットについて学んだそうです。 日本でもRMを導入する企業は増えており、化粧品メーカーの資生堂では大きな成果を挙げています。同社では2017年からRMを開始、最初は20名ほどの役員が自ら手を挙げ、若手社員にIT活用支援を受けるというものでしたが、現在同社ではRM制度を部長級以上の役職者が必ず受けるプログラムに拡大しています。さまざまな部署からメンターになる社員が部門長クラス以上の推薦で選ばれ、自部署以外の部門長(メンティー)とのマッチング以後、3~6回のミーティングを1年間にわたって行っていきますが、最初にお互いの好きなものを「My 偏愛 MAP」で共有することからプログラムがスタートするそうです。 仕事以外の趣味や特技がきっかけでナナメのコミュニケーションが活性化され、役員とメンターのコンビの起案でイノベーションにつながるような社内横断プロジェクトが始まったりしているそうで、例えば若手社員からSNSツールの活用方法を学んだことがきっかけで社内SNSの仕組みが導入されるなど、本業への効果は当初の想定以上だったようです。「経営層がなぜその意思決定を下したのか」を積極的に語ってくれる役員の方もいらっしゃるようで、メンターの若手社員からも「事業に対する理解が深まった」「視野が広がった」との感想が多く、若手社員の人材育成の面からも効果が高いそうです。 東京海上日動社での取り組みでどのような成果が生まれるのか楽しみです。業界内にこのような制度が広まっていくことを期待したいと思います。 (GuardTech検討コミュニティ代表)https://www.facebook.com/j.nukumizu |