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【め・て・みみ】損保協会長、旧来の業界慣行見直し等信頼回復のため取り組みを発表

2024年09月24日

 城田宏明損保協会長は、9月19日に協会長ステートメントを発表し、その中で、相次ぐ損保不適切事案問題に対する損保協会として、損保業界の信頼回復のための具体的な取り組みを明らかにした。

 城田協会長は、まず、本年5月以降一部の会員・損保会社で確認されている情報漏えい問題に触れ、「損保協会は、保険金不正請求事案や保険料調整行為事案といった不適切事案を二度と起こすことがないよう、法令等遵守の徹底をはじめ、信頼回復の取組みを進め、会員・損保各社においては、同協会策定のガイドラインなどを活用しつつ自社の業務運営の見直しを進めているが、一部の会員会社において保険会社と乗合代理店間のメール連絡による個人情報の漏えいが発生していたことが確認され、その後、保険会社から保険代理店への出向者が、出向先内の他保険会社の契約情報などを出向元に流出させていたことも確認された。これらの情報漏えい事案については、金融庁から報告徴求命令を受けた会員会社が、事実関係、お客さまへの対応方針、真因、再発防止策等について、本年8月末に金融庁に報告を行っている」とし、「同協会としても、事案を大変重く受け止め、会員・損保会社に対して、情報漏えいの実態調査や再発防止の徹底を要請したところだ」とした。

 城田協会長は、「本事案の真因は、個人情報保護法をはじめとする各種法令に対する認識不足と教育の不徹底、業界特有の他社との接点や情報共有に伴うリスク感覚の鈍化、業務実態や内在するリスクに対する不十分な管理態勢、営業数字やマーケットシェアに偏重した営業活動等にあると考えている」とし、「会員各社における再発防止の徹底はもとより、業界全体の『法令等遵守』『お客さま本位の業務運営』の徹底と旧来の業界慣行の根本的な見直しを、今後より一層進めていく」とした。

 信頼回復に向けた損保協会の具体的取り組みの概要は以下の通り。

1)健全な競争環境の実現 

 本年3月に損保協会内に設置した「業務抜本改革推進プロジェクトチーム」が中心となり、「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」の報告書を踏まえ、健全な競争環境の実現や損害保険業の基盤を支える業務品質の向上等の取組みについて、鋭意検討を進めている。引き続き、課題解決に向けてスピード感を持って取り組んでいく。

なお、本年8月26日に設置が決定した金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ(仮称)」では、保険市場の信頼の確保と健全な発展を図るために必要な方策について検討が行われるものと認識している。損保協会としては、今後も損害保険が社会インフラ機能の提供を通じて、経済及び国民生活の安定と発展に寄与していくために、本ワーキング・グループの議論を注視し、既存の取組みの高度化や更なる課題の特定に取り組んで行く。

ア.政策保有株式に係るガイドラインの策定 

 損保各社はこれまでも政策保有株式の縮減に努めてきているが、政策保有株式等に係る適切で規律ある行動を一層促すことを目的に、政策保有株式に係るガイドラインを策定し、9月19日公表した。本ガイドラインでは、政策保有株式の新規保有を行わないことや早期に残高縮減に努めること、政策保有株式の保有実態を変えずに純投資株式に区分変更しないこと等、基本的な考え方を整理している。

イ.損害保険会社からの出向者派遣に係るガイドラインの策定 

 保険代理店等との関係強化や、保険契約の幹事・保険料シェアの維持・獲得を主たる目的とした出向は、顧客の適切な保険商品の選択や保険代理店の自立を阻害するおそれがある。こうした問題を解消するため、損保会社からの出向者派遣に係るガイドラインを策定し、9月19日公表した。本ガイドラインでは、出向目的、担当職務・権限、出向人数、出向期間及び出向負担金といった要件や、これらの要件に該当するか確認を行う統括部門の設置に関する基本的な考え方を整理している。また、今般確認された出向者による情報漏えい事案を踏まえ、個人情報保護法をはじめとする法令等遵守についても明記し、その重要性を改めて認識させる内容としている。

 今後、損保各社の取組状況、問題の解消状況、さらには監督指針改正等の動きを踏まえ、更なる見直しを実施していく。

ウ.募集コンプライアンスガイド追補版の策定 

 適切な保険商品を顧客が選択できる機会を確保するため、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引する、保険会社から保険代理店等への不適切な便宜供与を解消していく必要がある。この不適切な便宜供与に関する基本的な考え方をより早期に業界内に示していくため、募集コンプライアンスガイド追補版を策定し、本年7月25日に会員各社に周知した。

 会員各社における不適切な便宜供与の解釈のばらつきを今後なくすため、詳細な事例を示したガイドラインの策定に着手している。また、実効性を高める観点から、同協会内に保険会社社員向けの通報窓口の設置を検討している。

 これらのガイドラインに基づき、会員各社が自社のルールや運用の見直しを行い、より適切な業務運営を実現していくことが重要だ。健全な競争環境を早期に実現するため、同協会においては、会員各社の取組みを支援していく一環として、引き続き対応状況をフォローアップしていく。

2)保険代理店・募集人の業務品質の向上 

ア.代理店業務品質評価基準と運用体制の検討 

 保険代理店の業務品質を確保するため、第三者の視点を取り入れた業界共通の業務品質評価基準と、その基準を実効的に運用する体制の検討に着手している。

 具体的には、保険代理店の業務品質を中立的な第三者が公正かつ適正に評価できる仕組みの構築に向けて、同協会内に「代理店業務品質評価に関する第三者検討会」を設置した。構成メンバーを大学教授、弁護士及び消費者団体、オブザーバーを金融庁及日本代協として、第1回検討会を本年9月25日に開催する予定だ。

 検討に際しては、公正・客観的なプロセスとなるよう、同協会のホームページで検討経過を公表するとともに、意見受付窓口を常設する。さらに、同検討会で取りまとめた最終案に対しては、パブリックコメントを実施し、より広く意見を募集する予定だ。

イ.「代理店手数料ポイント制度に関する基本的な考え方」に対する共通認識の醸成 

 金融庁有識者会議の報告書では、代理店手数料ポイント制度に関して、次の検討が求められている。

・「規模・増収」に偏ることなく「業務品質」を重視すること

・「業務品質」の具体的な指標について、損害保険会社の事務効率化ではなく、顧客にとってのサービス向上に資するものとすること

 代理店手数料は、損保会社と代理店の間での協議・合意により決定されるものだが、すべての会員・損保会社が、自社における制度有無に関わらず、以下の考え方に賛同することを、19日開催の損保協会理事会において確認した。

【顧客本位の業務運営を推進する観点から、「規模・増収」に偏ることなく、顧客にとってのサービス向上に資する「代理店の業務品質」を重視した代理店手数料ポイント制度とする】

3)企業向け保険やリスクマネジメントの理解浸透 

 業界共通の企業向け案内ツール「リスクマネジメントと損害保険」を作成し、本年7月22日にリリースした。本ツールには、顧客企業に保険やサービスを検討してもらう際の前提知識となる、リスクマネジメントの必要性や損害保険の位置づけ、保険の原理原則等に関する基礎的な情報をまとめている。業界全体で、このツールを活用しながら顧客企業のリスクマネジメント力向上に貢献していく。

 また、顧客企業への情報提供の一環として、損保総研が実施しているリスクマネジメント力向上を目的とした学習講座について、今後広く案内していく。

4)不正請求への対策強化 

ア.修理工場向け写真撮影手引の作成 

 自動車修理の透明性確保に向けた取組みとして、修理工場向け写真撮影手引を作成した。この手引は、本年3月に国土交通省が公表した「車体整備の消費者に対する透明性確保に向けたガイドライン」を基に、自動車の損傷箇所などの適切な写真撮影方法を示したものだ。今後、修理工場にこの手引を案内し、自動車修理時の写真撮影の際に活用してもらえるよう取り組んでいく。

イ.業界内の内部通報制度の改定 

 損保各社においては、内部通報窓口を設置するなどにより不正請求などの問題を早期に発見し、適切に対応するための体制整備に努めている。こうした個社取組みに加え、業界全体の自浄作用を一層高める観点から、損保協会が従来運営してきた内部通報制度を一部改定した。今後は、不正請求や自動車修理に係る不審点等について、保険会社社員や代理店等が、匿名で損保協会に直接通報できる業界内の内部通報窓口としての位置づけとなり、これを改めて周知した。

5)コンプライアンスの更なる強化 

 業界全体のコンプライアンス意識を強化するため、損保総研の本科講座において、独占禁止法をテーマとする特別講義を7月から8月にかけて計6回実施した。また、損保協会において、独占禁止法の基礎知識をわかりやすく解説する動画コンテンツを作成し、独占禁止法に関するプログラムの高度化を図っている。今後は、本年10月に会員会社向けの「独占禁止法コンプライアンス・セミナー」の実施を予定している。

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