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【め・て・みみ】改正金融サービス提供法の施行と保険代理店への影響 

2024年10月29日
【ニュース】

 昨年11月成立した改正金融サービス提供法(正確には金融サービス提供及び利用環境整備に関する法律)は、顧客の最善の利益を考慮した誠実・公正義務に法的な根拠を与え、金融サービス事業者への規制・監督を一段と厳格化するものとなったが、その施行は本2024年11月1日となる。この金融サービス事業者には保険会社や保険募集人(保険代理店)も含まれるため、これへの備え、態勢整備をしっかりはかっていくことが肝要だ。

 これまで損保不祥事問題は損保大手3グループ・4社と大規模乗合代理店が主たるターゲットとされており、金融庁の有識者会議報告書や最近開始された金融審議会の損保問題作業部会の議論も両者の関係性の是正、そのための制度等の変更論議が中心となっているため、一般の代理店には対岸の火事と見て高みの見物を決め込む傾向がみられるが、今回の改正金融サービス提供法の規制対象は、保険代理店全体に及んでくるのは必至で、その法の狙いをきちんと抑えていくことが必要だ。

 全金融サービス事業者を対象に金融サービス法は2017年に成立したが、法の狙いは金融業界に蔓延する顧客軽視の風潮を改め、顧客本位の業務運営を求め、FD(顧客本位の業務運営)の7原則を創設した取り組みを全金融事業者を対象に提起してきた。しかしその後も不祥事続きで、形式に流れ実質的に根付かず、徹底されていないとみるや、昨2023年11月に金融商品取引法・金融サービス提供法を改正し、新たに顧客の最善利益の導入し、FD(顧客本位の業務運営)第2原則にある顧客への最善利益に基づく誠実公正義務に法的根拠づけを与えたもので、これにより、金融事業者を横断的に規制するとともに、不適切で悪質な業務運営が認められる場合には、必要な行政対応を行うことができることとすることで、金融事業者等の取り組みの一層の定着、底上げを図っていくのが狙い。この金融事業者にはもちろん保険会社や保険募集人(保険代理店)も含まれる。

 金融監督の在り方はこれまで、例えば保険会社→委託を受けた代理店→顧客という図式の消費者保護の構えだったため、保険会社の監督を通じ業態別縦割りにサービス現場での顧客保護を図ってきたわけだが、新たな金融サービス提供法では、顧客起点で、金融サービス事業者は、金融サービスの提供を業態横断的にサービス価値を提供していくものとし、適正競争により、顧客の金融リテラシー向上とサービス提供者の専門能力引き上げを図っていくものとして位置づけなおそうという方向に転換の舵を切った。そして金融事業者間の競争の源泉は、デジタル活用能力とガバナンス能力に求めたのだった。

 2024年6月27日の金融サービス提供法関連の保険会社向けの総合的な監督指針パブコメでは、新たに契約者保護等を規定した2"-4-4-1顧客の最善の利益を勘案した誠実公正義務(金融サービス提供法第2条)で、(1) 主な着眼点で、保険会社のみならず代理店にも顧客に対し顧客の最善の利益の観点に立ち規模・特性等に鑑み、組織運営や商品・サービス提供も含め、顧客に対して誠実かつ公正に義務を遂行しているかの検証を打ち出した。さらに、(2)監督手法・対応では、日常の監督事務や、不祥事件届出書等を通じて把握された保険会社の誠実・公正義務上の課題については、深度あるヒアリングや報告徴求命令をだし自主的な業務改善状況を把握するとともに、保険会社の業務の健全かつ適切な運営の確保又は顧客保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、業務改善命令、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、業務停止命令等を出すとしており、保険会社のみならず保険募集人についても上記に準じて必要な対応を検討する、としている。

 顧客の最善利益を勘案し誠実・公正義務を保険代理店にも課すことで、厳格な説明義務を検証していくとした意味は大きいし代理店もこれに備えたPDCAを、しっかり回せるような態勢整備が必要だ。

(中)

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