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め・て・みみ~有識者会議 損保と大規模代理店の不適切な関係解消求める

2024年05月27日

 すでに昨年来、12月の金融庁の行政処分や公取委の調査等で、社会的に大きな関心を呼んできた、損保の保険金不正請求問題(いわゆるビッグモーター(BM)問題)および損保4社の企業火災の保険料調整行為問題(同カルテル問題)を受けて、金融庁が「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」*を立ち上げ、本2024年3月26日に第1回、4月26日に第2回目の会合があり、5月24日には第3回目が開催され、6月には検討結果が報告書として取りまとめることになる。

https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/meibo.pdf

 3月26日の有識者会議では、1)保険金不正請求問題、2)保険料調整行為問題の2つのテーマにつき、事務局説明資料で、それぞれの行政処分と業務改善計画の概要が端的にまとめられ、有識者会議で今後の議論してもらいたい事項につき総論的な論点整理がなされ、これに基づき、有識者会議の各委員の意見を提起してもらっている。(事務局説明資料と第1回議事録詳細は下記の通り)https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/siryou/20240326/siryou2.pdf
https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/gijiroku/20240326.html 

 総論的に問題点が整理され、論点は、1)保険金不正請求問題では、大規模乗合代理店に対して、実効的な指導・監督の確保、大規模乗合代理店に左右されない支払管理態勢、大規模乗合代理店の適切な評価の在り方、兼業・乗合代理店による比較推奨の適切な実施、兼業乗合代理店に対し利益相反が生じる業務禁止または防止措置の実施、代理店への本業支援のあり方、保険会社および代理店への実効的な監督・検査、2)保険料調整行為問題では、共同保険における適正な競合環境の整備、保険契約以外の要素を反映した取引慣行の是正、リスクに応じた適正な保険料を提示できる保険引受管理態勢の確立、企業内代理店のあるべき姿、独禁法等の遵守に向けた法令等遵守態勢の確立、をあげている。 これらの事項からうかがえるのは、今回の問題は、単に法令順守や行為規制にとどまらず、企業向け保険の取引慣行の見直し、ルール改正や企業内代理店の在り方にも踏み込んでメスを入れ、ルール、制度改正など抜本対策を講じようとしていることが端的に示されていることだ。

 4月26日開催の第2回目の有識者会議では、1)の保険金不正請求問題が集中的に検討された。事務局説明資料では、保険金不正請求事案で認められた課題の相関図が提起されるとともに、課題への対応策としては、
 1大規模代理店に対する監督
 2代理店手数料ポイント制度
 3保険代理店に対する本業支援等
 4乗合代理店による比較推奨等
 5保険代理店の兼業・保険金等支払管理
の5つが提起されこれにのっとった検討がなされた。(事務局説明資料と第2回議事録詳細は下記の通り)
https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/siryou/20240425/siryou1.pdf
https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/gijiroku/20240425.html

 中でも、BM等の保険金不正請求問題について、それが保険会社と顧客企業・代理店の歴史的取引慣行や企業風土に由来する構造的な問題にあることを重視し、とりわけ保険会社と大型・乗合・兼業・企業などの巨大代理店との関係について、保険会社と代理店の力関係の変化に着目し、個々の保険会社の監督・指導・教育などのレベルでは解決できず適正化していくには抜本的な解決策が必要、との視点で、ルール、制度の見直し、とりわけ、生保協会の比較推奨販売をする生保乗合代理店を対象とした認定代理店制度を参考に、損保でも大型乗合代理店の業務品質をチェックする第三者機関・自主規制機関の設立検討などが提起・検討されている。

 保険料ポイントでは「大規模」による効果を増長(保険代理店が挙績志向に)してきたとし、損保代理店の規模や増収面など業績評価に偏ることなく、業務品質を適正に評価し、その結果を重視することが重要であり、損保会社に対し、そうした対応を促すための方策や 業務品質では、どのような内容が評価されるべきかが提起されている。

 5月24日開催の第3回目有識者会議では、2)保険料調整行為問題について集中審議がなされた。(事務局説明資料は以下の通り)
https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/siryou/20240524/siryou1.pdf
 事務局説明資料は、保険料調整行為事案で認められた課題(相関図)、課題への対応策として、論点として、適正な営業推進態勢及び保険引受管理態勢等 、業内代理店をめぐる構造が提起された。当日の有識者会議では、中でも損保と企業との不適切な取引慣行の温床の一つとなった可能性がある企業代理店の在り方が主な論点となった。

 保険の自由化前(1996年以前)に設立された企業代理店に適用されている特定契約規制(自己契約保有50%以内)に関する規制の一部緩和措置(対象種目を自動車、火災、傷害に限定し賠償責任保険はじめ新種保険は対象外)を、保険実務の専門性が低い企業代理店の存続につながっているため、この特例措置の撤廃を求める提言があり、この猶予措置の撤廃の是非について検討する方向だ。

(中)

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