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め・て・みみ~保険のサービス化と代理店の機能分化
2025年02月25日
【ニュース】
保険の取引慣行、商慣習のあり方が抜本的かつ全面的に見直されつつある。 発端はこの間の一連の不祥事(保険金不正請求、保険料カルテル、情報漏洩)にあったが、商品・価格競争を回避し歪んだ非価格競争・過度の便宜供与による契約獲得競争に走ったためであり、その業界体質、中でも、保険会社と代理店(とりわけ大規模乗合・兼業・企業内代理店)の関係そのものが顧客起点に立った適正競争環境整備という観点から問い直されたのであった。 しかも、単に保険業界にとどまらず銀行や証券を含め金融サービス全体の在り方も今一度顧客起点に立った金融サービスサプライチェーンとして横断的な取り組みが一段と強く求められ、それは改正金サ法での顧客の最善利益義務として法制化され、2024年11月より施行されるところとなっている。 またこうした金融サービスの在り方を強力に推進するのがDXで、保険のビジネスも従来の保険ビジネスのとらえ方をこうした流れを踏まえ、デジタルとデータを活かした保険サービス産業化へと大きく舵を切る展開となっている。こうした中で各保険会社は、顧客起点に立ち、オープンイノベーションの観点からオープンスタンスで迅速かつ効果的な時代対応を図るため、従来からのレガシーシステムこれまでの業界内求的・閉鎖的な経営戦略や歪んだ、トップライン重視、シェア至上主義の営業路線を転換せざるを得ず、そのための戦略的なビジネスデザインの変更も急務となっている。 すでに保険会社レベルでは、こうした観点に立った抜本的な施策展開が図られつつある。営業現場における代理店支援の在り方もWeb戦略を活用し、従来の対面中心の支援を見直しに動くところも出てきている。 こうした中で、代理店側も新たな対応を求められている。というのも保険会社がDX戦略に基づき代理店支援を展開していくとするなら、それに対応する態勢整備が求められるからだ。当然ながらそのためには、デジタル化に向けたコスト投下や人材の手当て、教育・研修麺の負荷の増大に耐えていかなければならない。顧客に対する様々なソリューションの提供者(プロバイダー)ないしはサービスプラットホーマーとしての役割も果たしていかねばならない。 こうした局面に直面し、小規模経営の多い代理店としては、現場の独立自営のマインドを持ち、顧客からの信用をキープしてどこに重きを置いた取り組みが必要かが問われている。 言い換えれば、保険サービス化が進めば、代理店の役割・機能面での多様化、分担化が出て来るのではないか。顧客とのタッチポイントに集中しマーケティングを担う代理店、それを後方から支え、システム面・監査面や教育・研修面・保険のみならず多様な非保険商材の管理面などで支援していく多様な専門家・支援の機能を担う代理店モデルも必要になってくるのではないか。 またデジタル化・保険のサービス化の進展は、代理店の高齢担い手層(保険募集人)が業務プロセスについていけない結果をもたらすため、募集人登録返上のうえ、顧客とのつながりを生かし、非保険サービスの担い手として再活用する新たな事業を起こすことも必要かもしれないし、そのような動きも出てきつつある。 これまでは、大きいことは良いことだ、とピラミッド型の兄弟組織化モデルの代理店が構想されてきたが、これからの時代は、Web3.0に象徴されるように分散型志向で水平・ネットワーク型で進んでいくのではないか。 また本来、保険代理店は限られた地域、市場、コミュニティを基盤として成り立っているケースがほとんどで、しかも独立自営のスピリットが旺盛で、固有の顧客基盤を構築しているため、この独立性を活かした緩やかな代理店間ネットワークの構築が不可欠となっている。 改正金サ法は、顧客の最善利益義務の担い手として金融事業者として、銀行、証券、保険とともに保険代理店(保険募集人)も同列の金融サービスサプライチェーンとして位置づけている。ただし、現行の保険業法では代理店による代理店の代理(復代理)は認められておらず、保険会社と代理店の直接の委託契約が前提になっており、保険会社の管理・指導を要件としている。 このため、最近米国保険市場で特殊保険分野で大躍進し注目を集める管理総代理店(MGA)のような、代理店の独立性を前提にした組合型の組織化は不可能で、結集するには一旦社員化し巨大ピラミッド化しなければならなくなっており、歪んだ組織形態となっている。 今後、代理店の業務・サービス品質・態勢整備が厳格に求められてくれば、代理店のガバナンスも向上してくるのは必至であり、それに見合った復代理の解禁論議も射程に入ってくるのではないか。 (中) |