ゲストさん   
 
【inswatch記事カテゴリ】
inswatch新着記事 一覧はこちら

【め・て・みみ】金融局面の変化で動き出すか金融サービス仲介業

2024年06月25日
【ニュース】

 インターネットを通じた送金や証券取引、保険契約の締結のように、オンラインでの円滑な金融サービスが可能となり、世帯の有り方や働き方が多様化する中で、利用者が様々な金融サービスの中から自身に適したものを選択しやすくなることが求められている。

 このような背景のもとで、1つのライセンスで「銀行・証券・保険・貸金」すべての分野の金融サービスをワンストップで仲介可能とする新たな業種「金融サービス仲介業」を創設することを目的に、 2020年6月に金融商品販売法が「金融サービスの提供に関する法律」(金融サービス提供法)に改正され、2021年11月に施行された。金融機関への所属制をとらないことにより、より利用者視点に立った金融サービス提供の可能性が広がり、金融サービス仲介業により、利用者・金融サービス仲介業者・金融機関での「三方良し」となるサービスの提供が期待された。

 各金融機関への所属性を取らないため、金融サービス提供法40条に基づき、金融サービス仲介業の業務の適正を確保し、その健全な発展および利用者の保護に資することを目的に一般社団法人日本金融サービス仲介業協会は、認定を受けた自主規制機関として設立されている。

https://jfim.or.jp/

 その船出は、厳しいものだった。2021年11月から導入された金融サービス仲介業は、当初は銀行、証券、保険の金融商品をデジタルを活用し簡便かつ横断的に扱える新たなビジネスモデルとしてその成り行きが注目されたが、それぞれの分野で取り扱える商品などが限定(銀行のカードローン、証券のデリバティブ取引、外貨建て保険などは扱えない)されていたこともあり、実際に登録し、参入する企業が数社に限られ、寂しいスタートとなった。

 しかし、その後、財務局への登録は年々増え、6月の現在時点では11社を数えるまでになっている。

 これまでの登録事業者は、SCSKサービスウェア、SBIネオトレード証券、NTTドコモ、Habitto、400F、リクルートペイメント、リロ・フィナンシャル・ソリューションズ、BlueBank、マネーフォワード、TMJ(セコム傘下の人材派遣業)、JMTKとなっている。

 なかでも、本年に入り新たに登録したマネーフォワード等は、金融サービス仲介業者として、新たな少額投資非課税制度(新NISA)を使った資産形成サービスを始めるなど新たな市場拡大に向け顧客利便性を追求しているのが注目される。同社は、自社の家計管理サービスなどを使う会員向けに投資を一任する商品の提供を始め、世界の株式に分散投資し、新NISAに対応し、投資額60万まで手数料実質無料とするなど利便性の良いサービスを提供することで普及を図る。同社は金融商品仲介業ではなく金融サービス仲介業を選択したのは、全社が契約先証券会社に取扱商品含め縛られるのに対し、後者は、証券会社から独立した立場で、契約先も自由に選べるからとの判断だ。

 銀行、証券、保険の金融商品をネットを活用し、ワンストップでサービス提供できるようにし金融商品を比べやすくする狙いがある。金融サービス事業者となることで、銀行、証券、保険等別々の登録をとる必要がなくなり、参入しやすくなったが、扱える商品面の規制と自前でコンプライアンス(法令順守)体制を整え、システム投資する必要があるなどが参入を妨げていた。

 しかし、それも昨今の金融情勢の変化で、局面が一変しつつある。株高基調の市況や、円安に歯止めがかからない現状でマイナス金利解除など金利面でも将来引き上げ機運が醸成されているセンシティブな局面となっており、新NISAを含む「貯蓄から投資」の流れが出てきつつある。

 こうした金融局面の変化をビジネスチャンスとし、システム投資や体制整備にコストをかけても金融サービス仲介業に参入を検討する企業が増えてきつつあり、ようやく本格的な展開の時期を迎えつつある。

(中)

Copyright© 有限会社インスウオッチ,All rights reserved.