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【め・て・みみ】大規模店に対する規制強化の影響とプロ代理店の課題

2024年08月20日

 ビッグモーター問題や保険料カルテル問題に象徴される今回の一連の「損保問題」は、メインターゲットが損保の大規模乗合代理店と保険会社間の問題だった。金融庁の有識者会議での4ヵ月に及ぶ論議はこれらの不適切な関係の洗い出し、問題点の明確化、再発防止策の検討にとどまらず、それを引き起こした取引慣行などの構造問題に踏み込んだものであった。

 その結果、保険会社の代理店の統制上(管理・監督、指導・教育)の問題点や大規模な企業代理店や兼業代理店が非自立・実務能力の無さと保険会社との間で作り出された不適正な癒着構造の解消に主眼が置かれ、検討場所を金融審議会等に移し、今後それを是正するための新たなルールや制度や基準の創設へと進むことは必至となっている。

 すでに損保大手4社の政策的な株式保有の期間を切っての削減・解消施策は開始されているほか、代理店への過剰な便宜供与の見直し検討・ルール化や企業代理店の優遇策の見直しが求められているほか、企業代理店にとっても従来の保険会社依存から脱却し、自立化、実務能力向上、体制整備の強化が求められる厳しい見通しを踏まえ、プロフェッショナル化を図るか、他の大手銀行系や商社系代理店等に売却するか、の進路選択も迫られている。

 こうした大規模乗合・兼業代理店や企業代理店の厳しい実情を横目に見ながら、自立化し適正な業務能力を有したプロ代理店としては、同じ保険代理店の名のもとに一括りにされるのは迷惑だとしたり、また保険会社のとってきた代理店政策のダブルスタンダードに非を鳴らすのもわかる。規模や増収面、営業成果のみに偏重した従来の保険会社の代理店チャネル政策、代理店手数料ポイント制度の変更を伴うだけに歓迎すべき動きと映るかもしれない。

 しかし、今後、適正な競争環境の整備の観点から、保険会社は、代理店政策面でも、今一度経済原則を踏まえ、合理的な企業行動を基本としたスタンスに立ち戻る場合、顧客本位の業務運営にのっとり保険代理店との適正な関係の構築に邁進することになるのは必至だ。

 業務品質重視についても、これまでの業務品質の項目と言えば早期更改やデジタル化等は保険会社都合の一方的効率化要請の色合いが強く、顧客からの満足度など定性的な要素は加味されてこなかった。今後は、業界の英知を集め、標準化・共通化した業務品質の中身こそが問われる時代に入った。例えばPDCAできちんと業務が回せているかのチェックとか顧客の個人情報保護の仕組みが整っているか、情報提供をきちんとしているかなどより突っ込んだ代理店の経営の中身が問われることになる。

 このように、今後は間違いなく、業務品質の向上に力点を置き、代理店の態勢整備、PDCAの徹底やデジタル化を徹底させた業務プロセス改革に更に突き進むことになろう。そのためには、プロ代理店としても自らのITや人材の確保・養成・教育にコストと時間を投入する必要に迫られよう。生成AIの活用などデジタル化を駆使した経営や業務プロセス改革を進め、生産性向上を図るとともに、社会性・公共性を踏まえ、サービスの多様化・高度化に取り組むことになろう。

 (中)

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