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【め・て・みみ】大規模乗合代理店規制の法改正は金融審議会WGで継続検討

2024年09月03日
【ニュース】

 ビッグモーター問題や保険料カルテル問題に象徴される今回の一連の「損保問題」は、メインターゲットが損保の大規模乗合代理店と保険会社間の問題だった。金融庁の有識者会議での4ヵ月に及ぶ論議と6月25日公表の報告書は、はこれらの不適切な関係の洗い出し、問題点の明確化、再発防止策の検討にとどまらず、それを引き起こした取引慣行などの構造問題に踏み込んだものであった。

 その結果、保険会社の代理店の統制上(管理・監督、指導・教育)の問題点や大規模な企業代理店や兼業代理店が非自立・実務能力の無さと保険会社との間で作り出された不適正な癒着構造の解消に主眼が置かれ、金融当局や業界内で旧慣行の見直し、弊害防止のため、大規模乗合代理店の実態調査や指針や業界ガイドライン作りが自主的に進められるとともに、法改正を伴うものに関しては検討場所を金融審議会等に移し、今後それを是正するための新たなルールや制度や基準の創設へと進むことは必至となっている。

 8月26日開催の金融審議会金融分科会合同会合でも、「損害保険業等に関する制度等WG(仮称)」設置について取り上げられ、有識者会議報告の再発防止諸施策のうち法改正を必要と考えられる論点につき検討を継続していく。

 「保険市場の信頼の確保と健全な発展に向けた方策に関する検討」として、主な検討課題は以下の3点だ。

 1)大規模乗合代理店に対する厳格な規制

 現行法では保険代理店への管理・指導は基本的に保険会社が行うことが想定されているが、大規模乗合代理店においては保険会社による管理・指導が適切に行われておらず不適切な保険募集の事例が認められ、こうした問題への対応として、規制の厳格化等の制度整備を検討。

 2)保険仲立人の活用促進

 保険仲立人は、顧客から委託を受け保険契約の締結の媒介を行うだが、登録事業者数や取次契約額伸び悩んでいる。企業向け保険市場の競争原理の改善を通じた活性化を図る観点から、保険仲立人の活用を促進。

 3)その他

 企業向け保険市場における火災保険の赤字構造の改善、保険契約者等への不適切な分木供与の解消等。

 今後、金融審議会「損害保険業等に関する制度等WG(仮称)」の場で検討し、法改正につき、金融審議会に諮ることになる。

 8月30日に発表された2024事務年度金融行政を発表し、1)金融のメカニズムを通じて持続的な経済成長に貢献する、2)金融システムの安定・信頼と質の高い金融機能を確保する、3)金融行政を絶えず進化・深化させる、を柱と掲げた。このうち2)金融システムの安定・信頼と質の高い金融機能を確保する、の業態共通の課題として、1)経営基盤の強化と健全性の確保、2)事業者の課題に応じた支援の促進、3)事業者の持続的な成長を促す融資慣行の確立、4)令和6年能登半島地震等への対応、5)利用者目線に立った金融サービスの普及( 顧客本位の業務運営、顧客に寄り添った金融サービスの提供など)、6)台頭するリスクへの対応(金融犯罪への対応、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の強化、サイバーセキュリティの強化、 経済安全保障上の対応、ITガバナンスの強化、 気候関連金融リスクへの対応)があげられている。

 また、業態別(保険会社)の課題への対応として、「保険市場の信頼の回復と健全な発展に向けて」、「経営基盤の強化と健全性の確保等」の2点があげられている。

 1)「保険市場の信頼の回復と健全な発展に向けて」では、有識者会議報告書を踏まえ、第三者による評価の仕組みの導入等による損害保険会社の大規模代理店に対する指導等の実効性の向上や保険会社による自社商品の優先的な取扱いを誘引する便宜供与の解消、保険会社における適切な保険金支払管理態勢の確保、企業内代理店の実務能力の向上や自立の促進などについて、今後、必要な調査・分析を行った上で、監督指針の改正及び業界ガイドラインの策定・改正等を進める。

 さらに、金融審議会において、大規模な保険代理店における態勢整備の厳格化、保険仲立人の活用促進、企業向け火災保険の赤字状況等の論点について、制度改正の必要性を含め、具体的な対応を検討する。

 大手損害保険会社各社の業務改善計画については、その着実な実施と実効的な改善に向けフォローアップを行う。生命保険会社においては、代理店監督のさらなる高度化を目指す。」としている。

 2)「経営基盤の強化と健全性の確保等」では、保険会社には、顧客ニーズに的確に応えた質の高い保険サービスを提供するとともに、少子高齢化や自然災害の頻発・激甚化、自動車保険市場の縮小等の中長期的な事業環境の変化を見据え、顧客基盤の強化や収益の補完に向けた取組等を通じて、持続可能なビジネスモデルを構築することが求められる。また、保険会社の海外進出及び子会社の設立等が進む中、内部監査の高度化、グループ・グローバルのガバナンスの高度化を進めることも重要である。海外当局とも連携しつつ、これらの取組の着実な進展を促す。

 経済価値ベースのソルベンシー規制の導入を円滑・着実に進める。くわえて、経済・金融市場の動向も踏まえつつ、保険会社の財務・業務の健全性や資産運用の状況について、モニタリングを行う。

 自然災害への対応については、近年の自然災害の頻発・激甚化による保険金支払いの増加等により、保険料率が上昇傾向にある。こうした中で、損害保険会社が自然災害に対する備えとしての機能をより適切に発揮できるよう、損害保険会社に対して、統合的リスク管理(ERM)の高度化、防災・減災のサポート等に向けた対応、気候関連リスクへの取組を促す。

 少額短期保険業者については、財務局と連携し、財務の健全性や業務の適切性を確保するための態勢整備を引き続き促す

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