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生命保険ビジネスの「みらい」展望(6)デジタルで売るということ ―新しい保険販売のかたち
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2025年02月11日
【DX】
筆者は住友生命保険相互会社でデジタルとデータを活用しながら、企業や自治体との共創を通じて新しい顧客価値を創造する仕事を担当しています。本連載では、生命保険会社の新たな顧客価値創造領域である、保険以外のビジネスドメイン、いわゆる「非保険領域」に関する内容をテーマとします。 筆者たちは、デジタル化推進部門に所属し様々なプロジェクトに携わっています。先日、入社数年目の若手職員から以下の話がありました。 「なぜ生命保険は、スマートフォンで簡単に加入できないのでしょうか?自動車保険や海外旅行保険は、デジタル完結で加入できます。若い世代は対面での長時間の説明を好まないと思うのですが...」 「お客さまから『夜間や休日にじっくり検討したい』『家族と一緒に内容を確認したい』といった要望を聞きます。デジタルならではの特徴を活かした販売方法があるのではないでしょうか。」 これらは、生命保険販売にとって重要なことを含んでいます。生命保険は長期にわたる大切な契約なので、人による丁寧な説明が必要です。しかし、それは必ずしも対面でなければならないわけではないのです。 ◇デジタル販売という可能性 従来の生命保険販売は、営業職員による対面での提案が中心でした。しかし、お客さまの生活様式やニーズの変化に伴い、販売チャネルの多様化が求められています。例えば、定期保険や医療保険などの分野では、保障内容を必要最小限に絞り、デジタルで完結できる商品開発が販売されています。画面の遷移や説明を直感的に理解できるよう工夫し、保障の内容を視覚的に表現することで、お客さまの理解を深められるでしょう。 ◇人とデジタルの共創による価値 デジタル販売を検討する中で、筆者たちが特に重視しているのが、人とデジタルの組み合わせです。すべてをデジタルで完結させるのではなく、必要に応じて専門家のサポートを受けられる仕組みが重要だと考えています。 例えば、チャットやビデオ通話による相談機能は有効だと思います。夜間や休日でもお客さまの疑問にAIチャットボットが即時に対応し、より専門的な相談が必要な場合には、後日、担当者から連絡する仕組みがあればお客さまと生命保険会社双方にメリットがあります。 また、画面共有機能を活用することで、お客さまと担当者が同じ画面を見ながら詳しい説明ができ、より分かりやすい提案が可能になるでしょう。 生命保険は、お客さまのライフプランに大きく関わる商品です。そのため、デジタルツールの利便性を活かしながらも、重要な判断の場面では専門家による適切なアドバイスが受けられる体制が必要です。保障内容を決める時や保険料など、重要な判断ポイントでは、チャットやビデオ通話で気軽に相談できる機能があると良いと思います。 家族との共同閲覧機能も必要でしょう。離れて暮らす家族と画面を共有しながら一緒に検討できる仕組みにより、慎重な加入判断をサポートできると考えています。特に、ご高齢のお客さまの場合、ご家族と一緒に内容を確認できる環境があることで、安心して検討を進めていただけるのではないでしょうか。 作るのは難しいとは思いますが、お客さまの理解度に応じて、説明の詳しさを調整できる機能も有効でしょう。保険の基礎知識が豊富な方には要点を簡潔に、初めて加入を検討される方には基本的な説明から丁寧に、といった具合に、個々のお客さまに合わせた情報提供ができれば、満足度の高いサービスが実現できると考えています。 ◇データ活用の展望と課題 デジタル販売では、お客さまの行動データを活用した改善が可能です。例えば、どの商品説明に時間をかけているか、どの部分で迷いが生じているかといったデータから、より分かりやすいコンテンツの開発につなげることができます。 特に、保障内容の比較や保険料シミュレーションでの利用傾向を分析することで、お客さまのニーズにより適した商品開発や説明方法の改善が期待できます。 一方で、個人情報の取り扱いには細心の注意が必要です。特に健康状態の告知など、センシティブな情報については、プライバシーに配慮した入力方法や、段階的な情報収集プロセスが必要でしょう。 ◇データ活用の課題とリスク管理 デジタル販売を進める中で重要なのが「お客さまの理解と信頼」です。便利さを追求するあまり、重要な説明が不十分になることは避けなければなりません。 例えば、契約内容の説明においては、デジタルならではの特徴を活かしながら、確実な理解を促す工夫が必要です。動画やイラストによる説明に加え、理解度チェックの機能を設けるなど、丁寧な情報提供を心がけたいものです。 また、システムの安定性や情報セキュリティの確保も重要な課題です。24時間365日いつでも利用できる環境を整えながら、同時にお客さまの大切な情報を守る体制づくりが必要です。 ◇デジタルと対面で新たな価値を デジタル販売の検討を進める中で、新たな可能性も見えてきています。例えば、お客さまの利用データを分析することで、より使いやすいサービスの開発につながるヒントが得られるかもしれません。今後は、デジタルと対面のシームレスな連携も重要になってくるでしょう。お客さまが自分に合った方法で商品を検討し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けられる。そんな柔軟な仕組みづくりを目指していきたいと考えています。 生命保険会社には、お客さまの人生に寄り添い、確かな保障を提供する使命があります。デジタル技術を活用しながら、その使命をより良い形で果たしていけるよう、一つひとつ丁寧に取り組みを進めていきたいと考えています。 *次回は異業種との共創が生み出す新たな可能性 ―保険を超えるイノベーションについてご紹介します。 (住友生命保険相互会社 エグゼクティブ・フェローデジタル共創オフィサー デジタル&データ本部 事務局長) |
