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め・て・みみ~生成AI活用で先行するアフラック生命のDX戦略
2025年07月01日
保険会社は労働集約的産業だが営業やコールセンターなどの顧客対応サービス面で多くの人手を要しているが、少子高齢化で人材の確保が今後一段と厳しくなるも見込まれている。保険業界でも生成AIの活用などで業務の効率化、自動化などが必要になっている。ただ現状での各社の生成AI活用の展開はあくまで業務の補助にとどまっており、従業員の置き換えにまで至っていない。こうした中でこの分野で先行するアフラック生命(がんなど医療保険に強みを有する米国系生保)が生成AIを活用し労働集約型できた業界の事業構造の変革をもたらす施策を打ち出す取り組みが保険業界で注目を集めている。 本年4月からアフラック生命が保険販売の最前線でセールスフォース・ジャパンのAI(人工知能)エージェント「Agentforce(エージェントフォース)」の活用を開始した。DX戦略「DX@Aflac」を推進する同社は、エージェントフォースの本番稼働を開始した初の国内企業となった。 「DX@Aflac」は、コアビジネス、新規ビジネス、システム基盤の3軸で着実に成果を積み上げ、現在、最も注力するのは保険契約管理業務をゼロベースで抜本的に再構築する取り組み『プロジェクトZERO』。生保に対する顧客ニーズが多様化する中、コアビジネスにおけるデジタル化と自動化を徹底的に進め、労働集約型の現状から脱却し、限られた人数でより多くの業務をこなせるような筋肉質な業務構造の実現を目指す。申し込みから引受査定、契約保全、保険金支払いに至るプロセスを高効率なデザインに刷新することで、業務負荷を軽減するだけでなく、顧客の体験をより感動的なものへと進化させていく、としている。 今回、営業社員と保険代理店の募集人の営業活動に、自律型AIエージェントを活用することで、業務を効率化し、営業力を強化する。 同社では、それにとどまらず将来戦略として、現在の保険商品は、パッケージ型を基本に様々なオプションを組み合わせるものであり、カスタマイズには限界があるため、将来的には、保険の機能要素を細かなモジュールに分解して、顧客のニーズに合った形に瞬時に組み合わせる、すなわち、顧客が1万人いたら1万通りの保険を提案、というフルカスタマイズ型『究極の保険商品』の実現も視野に入れる。 新たなデジタル労働力をもたらすAgentforceの活用戦略も描く。保険販売面では、現在人材確保が困難になりつつある代理店の営業担当者を置き換えることなどを検討、現在の保険業法では保険募集人資格が必要なためАIによる営業支援にとどまり、販売までは想定されていないが、将来の方向(制度改正)なども見据えシステム開発を進める、としている。 同社では、事業変革を実現するデジタルテクノロジー戦略を掲げ、AIを積極的に活用することで、感動的な顧客体験の提供と顧客の多様なニーズに真に寄り添う「生きる」を創るエコシステムの構築に取り組んでいる。 そこで、これまで活用していた生成AI、すなわち、社内向けシステム『Aflac Assist』や、保険代理店向け『アフラックAIパートナー』に加えて、新たに自律型AIエージェントの「Agentforce for Service」を導入した。 従来のチャットボットやCopilot-(会話型AIアシスタント)と異なり、自律型AIとしてより複雑なステップのタスクを高い精度で処理できる本ソリューションを、将来的に営業活動のエンドツーエンドに活用することで、更なる業務効率化および感動的な顧客体験の提供を目指す、としている。 同社はまたオープンAIと組んで顧客に自動で応答するシステムを開発すると発表した。(6月19日付日経朝刊)生成AIを活用しコールセンターのオペレータのアバダー(分身)が顧客に音声で対応するシステムを本年8月に導入。そのため、生成AIとアバター(分身)がコンタクトセンターのオペレーターの代わりを務めるデジタルヒューマンアバターの本番稼働に向けてテストを進める。現在約1600人いるコールセンター要員を2031年までに半減する。170億円の投資で、500億円の削減を見込む。生成AIを導入し大規模に人員削減するのは国内初となる。 コールセンターの生成AI導入の対象業務としては当面住所や名義変更、サービスの案内から始め、年内には住所変更手続きにまで拡大していくのをはじめ、数年かけ機能を段階的に高めていく、としている。 (中) |