| inswatch新着記事 | 一覧はこちら |
|---|
森を見る視点(29)生命保険の加入チャネル動向(2)
|
2025年08月05日
【プロの視点】
*この記事は、inswatch Professional Report Vol.255(2025年2月末発行)にて詳細をまとめた「生命保険加入チャネル動向・2025年版」のレポートを、抜粋した内容でお届けします。 公益財団法人生命保険文化センターが3年毎に行っている「生命保険に関する全国実態調査」の2024(令和6)年版が昨年末に公表となった。 https://www.jili.or.jp/research/report/zenkokujittai.html 前回、「直近加入契約の加入チャネル」について全体的な数値を紹介したが、今回はその中の「生命保険会社の営業職員」「保険代理店」「インターネット」「銀行」の4チャネルについて、筆者の見解も含め掘り下げる。 ◇生命保険会社の営業職員チャネル 令和6年56.7% 令和3年55.9% このチャネルは大手生保会社や一部の中堅生保会社による、保険会社に所属している営業職の人達の販売チャネルである。とくに大手生保では、ほとんどが女性であることも特徴。取り扱うのは自社商品のほか、近年は、提携先の別保険会社商品も取り扱っている。 推移をみると若干のプラス、ほぼ横ばいである。他チャネルが台頭する中で維持できているのは、営業職員の頑張りによるものと、取材等を通じてこのチャネルの募集人と話すたびに実感している。まさに営業職員の「人間力」で成り立っているため、人の頑張り次第で数字の上下に差が出やすい。とくに、勤勉で素直な資質があり、上司や会社との信頼関係が大きく影響をおよぼす。彼ら彼女らの「やる気」の維持が大変重要である。 しかしこのチャネルでは、大量採用・大量離職(ターンオーバー)という大きな問題が依然として解決せず多くの人が脱落していく。各社が解決に向けた取り組みを頻繁に発表しているが、筆者がこの業界に入った34年前から、本質的な仕組みは実は変わっていない。 職務義務と社会保険があるが、一般的な雇用とは異なり、自営業と同等に経費は自分持ち、さらに一定のノルマを果たさないと一気に最低賃金に落ちるといった非常に特殊な雇用形態である。個人的に「人の使い捨て」に近いと感じる雇用形態に課題意識を持ってから25年以上見守ってきたが、一昨年、第一生命が大量採用を辞める方向に舵を切り、その英断に非常に期待している。新契約が一時的に落ちる覚悟も必要となるが、営業職員達の素直で勤勉な資質に触れるたび、彼ら彼女らが幸せになれるチャネルであってほしいと願う。 ◇保険代理店 令和6年15.7% 令和3年15.3% こちらもほぼ横ばいと安定的なシェア率である。 このチャネルの特性として、保険代理店にはいくつかの分類があり、それぞれに文化や常識感、雰囲気、また今後の発展や展開も全く異なる。 まずは大きく2つに分けると、「生保を中心とした全国展開の大手保険代理店」と「おもに損保を中心とする中小規模の代理店」がある。 前者は発展傾向で個人の販売力がものをいう世界。優秀な人が活躍しやすく、優秀な人たち特有の前向きで明るい雰囲気がある。全国への支店展開拡大のほか、M&Aや異業種からの参入、変額保険が好調となるなど、販売も伸びている。 後者は、やや苦しい空気感が残る。これまで代理店規模を優先する手数料形態に苦しむ状況が続いたことが背景にある。 しかし、地域に貢献しながら地元顧客と信頼関係を築き、震災の時には身を挺して顧客のために奮闘する気質を持ったこの人達こそ、損保会社は最も大切にすべき人達ではないかと感じてきた。 この度のBM問題や企業内代理店のカルテル問題の影響により、単なる大型化にメスが入ったことで、実力や専門性の高い地域密着型代理店にチャンスが訪れているため、今後の活路に期待したいところである。 ただし乗合代理店の「ハ方式」の廃止や、損害保険協会策定の業界共通の「評価基準業務」が策定され来年度より全代理店に義務化となるなど、小規模代理店ほど負担が大きくなるため、これをサポートするシステムやAI技術の発展、また一部システムの標準化などにも期待したい。 ◇インターネット 令和6年5.9% 令和3年4.0% このチャネルは、3年前の令和3年は4.0%から、今回令和6年は5.9%とシェアを伸ばしている。全体で見ると数値は小さいが、このチャネルで働く人達の人数から考えると、大きな数値と伸び率と言える。コロナ禍の影響が薄れていく中でもシェア伸ばしているため、ネットチャネルへの認識と利用率が高まっている結果と言える。 今後もネットチャネルは伸びていく可能性があると感じており、その要因として、各社がネットチャネルへの取り組みを強化している点、例えば営業職員チャネルがメインの保険会社で、ネットチャネルを別途持つ事例や(太陽生命のスマ保険など)、ネット完結型と保険代理店からの両チャネルで加入できる商品を取り扱う(はなさく生命など)など、商品数自体が増えていることなどがある。 一方でネットチャネルから撤退した保険会社もある(アクサ生命のダイレクト部門(旧アクサダイレクト生命など)。これは、運営継続がそんなに簡単ではない背景があるものと思われる。その中で存続してきたネット生保会社には、運営努力があることも感じる。 今後、資本力のある大手生保などがテクノロジーを活かすことで、この分野にどのくらい力を入れてくるかに注目しており、今後も競争が激化するものと思われる。 ▽銀行チャネル 令和6年4.4% 令和3年6.0% このチャネルは、販売力が非常に強いことが特徴であるが、今回シェアを下げている。 定期預金の代替品として、一時払の外貨建保険や変額保険が積極的に販売されたが、投信商品リスクに関する説明不足への指摘や、ターゲット型商品の掛け替え問題など課題も多く、また来店型保険代理店やネットチャネルの台頭、銀行自体が減少傾向にあることも影響を受けたと考えられる。 今後は、顧客にリスクの説明をしっかりと述べたうえで販売していくことに対して、どこまで力を入れ、真摯に取り組めるかにかかっていると感じる。これまでのような、定期預金の代替品としての営業体制から脱却することが必要である。 以上、参考にして頂ければと思う。 (保険ジャーナリスト・(有)インスウオッチ発行人) |
