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め・て・みみ~保険代理店に迅速対応求められる態勢整備とシステム化 ー損・生保両業界で代理店への便宜供与等で業界ガイドラインを新設
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2025年09月30日
【ニュース】
損保事業の構造的問題に対する有識者会議報告書や損保ワーキンググループ報告書を受けて、保険会社や保険代理店における「顧客本位の業務運営」を徹底する等の趣旨で「保険業法の一部を改正する法律」が成立、金融庁そのパブリックコメント結果とそれに対する金融庁の方針を公表するとともに、「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正を2025年8月28日から適用し「保険代理店等に対する過度な便宜供与の防止」「保険代理店等に対する不適切な出向の防止」等に関する具体的な措置等を定めた。 これらのルール変更を受けて損保では代理店との関係見直し、便益供与や出向の見直し、情報漏洩への対処などでガイドラインを設定し、顧客本位と公正競争環境整備を図っている。 そのポイントは、1)便益供与の在り方の抜本的見直し、2)比較推奨や意向把握の厳格化・データに基づくエビデンスの必須化、3)代理店業務品質の見える化や第3者評価導入、4)内部通報制度の整備、5)保険募集人資格の格上げ・厳格化等である。代理店にとっては態勢整備のための組織運営の在り方の変革、募集業務の高度化やシステム化への取り組みが待った無しとなっている。 こうした中で損保協会は、9月5日に、損保会社による便宜供与適正化ガイドラインと別冊の事例集を公表するとともに、今回の法改正・監督指針の改正やパブコメ結果を取り込んで、2024年12月作成の「募集コンプライアンスガイド」(第2版)の改訂版(2025年9月版)を出し、「過度の便宜供与に係る体制整備」の項目を新設するとともに、関連法令の改正等を踏まえた所要の見直しを行い、構成等を全面的に刷新しており、代理店がPDCAを回してどのように対応したらよいかにつき、具体的かつ体系的に分かりやすく整理している。 損保協会の便宜供与適正化ガイドラインは監督指針の便宜要素の判断要素につき、1)必要性・2)適正性、3)公平性・4)合理性の4つに整理した点が特徴だ。 すなわち、1)監督指針でいう便宜供与の趣旨・目的は、必要性で評価、2)価格・数量・頻度・期間については適正性で評価、4)弊害の内容・程度は合理性で評価、3)保険会社から見て他の代理店との公平性については公平性で評価することで、顧客の商品選択が阻害されないことを狙いとしている。 これにより便宜供与をこれら4要素で整理し、社会通念上の妥当性を検証する建付けとしているのだ。このガイドラインは保険会社に向けられたものだが、代理店としてもこれらを理解したうえでの態勢整備面の対応が問われてくのは間違いない。 特に情報漏洩やサイバー対策に対する代理店のシステム面のエビデンス確保や安全対策などの対応は今後一層要請されるところとなっていこう。 *損保会社による便宜供与適正化ガイドライン https://www.sonpo.or.jp/about/pdf/bengikyouyo_guideline.pdf *事例集 https://www.sonpo.or.jp/about/pdf/bengikyouyo_guideline_appendix.pdf 募集コンプライアンスガイドで過度の便宜供与に対する体制整備上の留意点としては、1)社内規則等の策定、2)適切な教育・管理・指導の実施、3)自社への影響の有無に係る確認・検証、4)経営陣における評価・対応の検討、5)適切な解消措置の実施及び改善に向けた態勢整備、の5つを挙げている。 *募集コンプライアンスガイド(2025年9月版) https://www.sonpo.or.jp/news/notice/2025/pdf/boshuguide_202509.pdf ◇生保でも便宜供与・出向などでガイドライン新設 一方、今回の一連の法改正等は損保事業の構造的問題が主たるテーマではあったが、保険会社と代理店の関係に対する便宜供与や情報漏洩など同様の問題は生保にも波及している。このため、生保協会では、前号でも詳しく紹介したところだが、法改正や監督指針の改正を受け、生保会社による保険代理店への便宜供与や出向に関して業界指針(ガイドライン)を作成し、過度な便宜供与をしていないかを判断する基準の策定を求めるほか、適切性が確認できない場合は代理店に出向者を派遣しないよう求める。生保協会としての指針を設けるのは初めてとなる。「顧客本位の業務運営を推進する今後の取組み~法令・監督指針改正等を踏まえた、会員各社と保険代理店との適切な関係性の構築の推進等の取組み」として以下の施策を9月19日公表したもの。8月28日公表の監督指針のパブリックコメントを含めた対応をして作成している点が特徴だ。 生保協会では、監督指針改正等を踏まえ、協会ガイドラインの新設・改正等を行うとともに、会員各社の取組の高度化に向けた後押しを行っていく。 *生保協会「保険代理店等に対する便宜供与及び出向に関するガイドライン」 https://www.seiho.or.jp/activity/guideline/pdf/bengisyukko.pdf 便宜供与についてガイドラインでは厳格に規定、妥当性の検証が困難な金額の広告費や協賛金を支払うといった場合は過度な便宜供与にあたると判断する。損保ガイドラインと比べ、損保とは異なる生保特有の風土であるインセンティブ報酬や表彰、研修について詳細な規定をしている点が特筆される。海外研修や高額な贈答品、同伴者の招待などを社会通念上過度と明記するなど開催地・対象者・費用負担の妥当性まで細かく別紙で整理しているのが特徴で、生保で従来慣行化されてきた販売奨励施策に規制をかけたものとなっているのが特徴だ。 生保の代理店への出向については、人件費などの負担を出向先にも求めるほか、適切性が確認できない場合は代理店に出向者を派遣しないよう求める。(なお金融機関などへの出向については情報漏洩など相次ぎ問題視されており生保大手4社は2026年度にも営業目的の出向を原則廃止する方針。) 今回以上のように、損保協会、生保協会から便宜供与に関するガイドラインが出そろった。いずれも過度の便宜供与の防止が目的で作られたものだが、便宜供与については、損保ガイドラインの4つの要素からなる整理や事例集を参考にした代理店の態勢整備が求められる。改定された「募集コンプライアンスガイド」(2025年9月)などにも具体的な留意点が盛り込まれているので、実際に代理店が主体的に取り組む場合の参考になろう。 生保ガイドラインでは、特有の業界文化を背景としたインセンティブ報酬や表彰、研修等についての基準なども織り込んでおり、こうした面も踏まえ、代理店としては、PDCAを回し態勢整備を具体的かつ主体的に図っていくことが必要となっている。 すでに監督指針の一部改正は8月28日から有効になっているところから、待ったなしの迅速な対応が求められている。今後、こうした法改正や業界ガイドラインを踏まえ、また比較推奨などの項目で年末までに予想される新たな監督指針の追加改正などにも備え、保険会社の代理店に対する様々な要請を勘案しながらも自主的・主体的な態勢整備とスタッフ全員の意識改革と情報共有とサイバーリスクへの対策、業務の標準化と見える化、システム化、DX対応が問われるところとなろう。 (中) |
