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アクチュアリーによる保険会社の経営からの視点(1)専門職人材確保の難しさ

2026年05月26日
【プロの視点】

 保険会社を昨年7月に退任後、コンサルティングファームを立ち上げて運営していましたが、保険業界に勤める複数の知人からの要請もあり、今年の1月に人材紹介会社を開業しました。どの会社もアクチュアリー人材の不足に困っていたので、当初は社名にAC(アクチュアリー)を入れて「つながるAC」とし、アクチュアリー人材専門の会社とする予定でした。しかし、その旨を伝えると、多くの知人から「現在保険会社に足りないのはアクチュアリーだけではない。専門職全般だ」とお叱りを受けました。その結果、社名にSP(スペシャリスト)を入れて「つながるSP」とし、保険会社の専門職全般を人材紹介の対象にすることにしました。

 従来の保険会社、特に大手保険会社は、専門職に対する特別待遇を設定することはせず、総合職全般に同一の役職・年齢テーブルを設けているケースがほとんどでした。すなわち、仕事内容に関係なく、同一の役職・年齢であれば給与は同額というのが一般的でした。昔は転職市場が充実していなかったこともあり、大きな問題は生じず、離職率は一定範囲以内に抑えられていました。もっとも、営業とアクチュアリーに対してだけは若干の優遇があり、給料を若干高く設定していました。

 しかし、近年は働き盛り世代の価値観が “将来的なキャリア” よりも、 “短期的な給与の高さ”や “働きやすさ” に大きく舵を切り、また働き盛り世代の絶対数が不足していることもあり、大手の保険会社といえども退職者の増加のため、専門職人材の確保に悩む状況に陥っています。

 保険会社には多くの専門職が存在します。例えば、商品開発において事業方法書や約款を書く人やプライシングをする人、オペレーションにおいてアンダーライティングをする人や支払査定をする人、システムにおいて要件定義を書く人やデータセキュリティを管理する人など、一人前になるまで時間を要する仕事が数多く存在します。仮に、専門職5人が必要な仕事で専門職が4人しかいなければ、あまり大きな問題になりません。しかし、保険会社が本当に苦しい状況に直面するのは、最低でも専門職が1人必要なのに、実態として専門職が1人もいないという局面です。専門職が1人もいなくなってから初めて人材獲得に乗り出すというケースは多く見てきましたし、私も中小の保険会社で15年ほど経営に携わっていましたので、痛いほどこの問題に直面していました。特に昨今は、乗合代理店を対象とした生命保険会社の増加、ESRの本格導入に伴うリスク管理人材のニーズ増加、AIR(資産集約型の再保険)を取り扱う再保険会社の日本市場への参入増加などにより、専門職人材の取り合いが続いています。

 よく保険会社の人事部の人に専門人材の確保に関して相談を受けますが、その際は対応策として次の案をお薦めしています。
1.専門職に対する給与レンジの引上げ
2.在宅勤務の導入などによる働きやすさの増加

 まず1ですが、「アクチュアリー手当を導入するなど、もう十分に処遇している」と思われる人もいるかもしれませんが、昨今は専門職手当や専門職コースの導入により大幅な給与引き上げを行っている保険会社が多く、必要な専門職を十分な人数確保したいと思うのであれば、もっと引き上げる必要があります。

 次に2ですが、在宅勤務を認めていない保険会社ほど、専門職採用に苦労している傾向がみられます。私のようにワーカーホリックの人間には必要ありませんが、学生時代をコロナ禍で過ごしてきた若い社員や、コロナ禍で通勤地獄の無駄を理解してしまった働き盛り世代の人にとっては、給与が高いことよりも在宅勤務の可否の方が遥かに重要であったりします。もっとも、不真面目な社員は在宅勤務を一種の休暇と捉えて怠けることもありますので、上司の適切な勤怠管理は欠かせません。

 今後はますます専門職人材の確保は難しくなりますので、保険会社の皆様は、今から対策を講じておくことをお薦めします。

 (アクチュアリー)

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