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【め・て・みみ】第1回金融審損保作業部会開催、大規模店規制や仲立人活用など議論

2024年10月01日

 9月27日午前10時~12時、金融審議会の損保作業部会(正式には損害保険業等の制度ワーキンググループ)が開かれ、YouTubeでもその審議が配信された。今回の作業部会は、保険金不正請求問題や保険料カルテル問題、さらには情報漏洩問題につき、有識者会議報告やこの間の損保協会の取り組みを踏まえ、さらに顧客本位の業務運営と健全な競争環境実現の観点からどのような制度上の対応が必要かを検討するものだ。

 *事務局説明資料 https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo_wg/siryou/20240927/3.pdf

 *損保協会説明資料 https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo_wg/siryou/20240927/4.pdf

 この作業部会の議論を踏まえ、金融庁は金融審議会を開催し、必要あれば法改正も視野に対応を検討していくことになる。

 作業部会では、事務局から、

1)大規模代理店の規制の在り方(保険会社の管理・指導が機能しずらい中で募集品質向上のためどのような対応があるか)
2)保険仲立人の活用(1995年の導入以来シェア1%未満にとどまる、活用促進のためどのような対応があるか)
3)企業向け火災保険の赤字継続の改善策
4)公正な競争環境実現の観点から損保会社による便宜供与、企業代理店の目指すべき姿

の4つの論点が提起され、主としてこれに基づき検討された。以下の各委員からの意見のうち< >内は事前に資料提起の委員の意見を示す。

 1)の大規模代理店への規制では、現行の業法への上乗せ規制の必要や内部管理責任者や資格試験の新設、<管理責任者の設置取締役会、内部監査部等の体制、収入における保険代理業収入の割合の開示、乗合の場合の比較推奨販売の徹底、一社推奨の場合の根拠の明確な説明大規模代理店の対象をどうするか>、大規模店から外れた代理店への規制をどうするか、プロダクト・ガバナンスの観点が重要、大規模代理店には損保協会の第3者評価機関の評価を必須とすべき、規制強化のみならず遵守されるための実効性確保のため保険会社の求償権行使が重要等が議論された。

 2)の保険仲立人の活用では、<督指針5"-4-4(1)について、監督指針で「保険仲立人は、保険契約の締結の媒介に関する手数料等の全額を保険会社等に請求するものとし、顧客に請求してはならない」という点に関して、なぜ、このような指針が設けられてきたのか、その理由を共有してほしい、その上で、当該指針の合理性が現在においても妥当であるか否かについて議論を求めたい、その際、諸外国において同様の指針等が存在する場合、その理由が我が国の実情においても合理的であるか否かについて検討を。「保険仲立人は、顧客から委託を受けてその顧客のため誠実に保険契約の締結の媒介を行う」という点に鑑みると、顧客に手数料等の全額を請求することは合理的であるようにも見える>

 顧客側に立って作られた制度なのに保険料は保険会社からというのはねじれではないか、金融サービス仲介業者との役割の違い(企業分野での仲立人の活用)、保険会社、顧客双方から報酬を得るのは募集実務混乱から保険会社からの支払いに限定したのでは、また旅行業者はサービス提供者からもらう慣行もあるが、顧客が仲立人に支払う方式も検討してはどうか、海外では保険料から報酬を引くコミッション制度もあり、別途実費に当たるものをフィーベースで顧客が支払う方式もある、これらも検討を。

 <リスクマネジャー(利用者)のニーズの把握として、保険仲立人の活用を促進するための対応策について議論することは、顧客本位の業務運営や健全な競争環境を実現する観点から重要なテーマ。そのためには、保険の利用者である企業(リスクマネジャー)が保険仲立人制度を活用する際の理由・動機についての情報収集が重要>

 <兼業規制の在り方として、わが国の現行規制の下では、保険仲介人は「保険募集人との兼業は不可」で、その根拠としては、兼業を許すと、保険仲立人が特定の保険会社に偏った助言を行うことによる利益相反への懸念や、企業保険契約の複雑性などにより十分に専門的な知識を持たない保険契約者が不利な条件で契約を結んでしまうことへの懸念がある一方で、兼業を許容することにより、顧客への包括的なサービス提供など、保険契約者にもメリットがあるため、この論点を議論する上で重要な点は、保険の利用者である企業が、専門性の高いリスクマネジャーの組織的整備などを通じて、主体的・能動的にリスクマネジメントの意思決定を行うことができる主体であるか否か、あるいはその程度に依存する。例えば、「適格性」をみたすリスクマネジャーを設置している企業のみを対象として、兼業規制を緩和することは検討に値するのでは。その前提として、利益相反管理や情報開示の充実など、企業の適切な意思決定を支援するための環境整備は同時に必要、英国をはじめとする諸外国の事例は参考になる><他方で、大規模企業とは異なり経営資源に制約がある中小企業等では、専属の保険リスクマネジャーを組織的に整備することは難しいため、顧客保護の点から引き続き慎重な議論が必要>

 <リスクマネジャーの組織的整備のためのインセンティブとして、保険の利用者である企業が、専門性を有するリスクマネジャーの組織的整備などを通じて、主体的・能動的にリスクマネジメントの意思決定を行うことが、保険仲立人制度が有効に活用されるための前提であるとともに、健全な競争環境を実現する観点からきわめて重要なテーマ主体的・能動的な企業のリスクマネジメントのもと、保険仲立人を含む多様な保険仲介チャネルの使い分けが活性化することにより、企業価値を高めることが期待される。そのためには企業がリスクマネジャーを組織的整備するためのインセンティブ付けの仕組みが必要。例えば、豊富な専門的知識を有する「適格性」のあるリスクマネジャーを設置している企業に対しては、海外付保規制緩和や、保険仲介者に係るフィーベースでの手数料率(相対交渉で自由に手数料を決めることなど)、あるいは、保険仲立人の兼業規制の緩和の対象とするなど、各種の規制緩和措置を通じて、具体的なメリットを付与することは検討に値する「適格性」のあるリスクマネジャーを設置している企業に対して、トータルリスクコスト(TCOR)の開示を求めるなど、市場規律を活用したリスクマネジメント体制の高度化を支援することも一案で、広く議論すべき>

 <再保険のアレンジ等一部業務を除き保険販売において、代理店と仲立人の際は実質的にない一方、仲立人においては保証金の供託や手数料・報酬の開示義務等代理店には不要な充足条件があり、仲立人業に参入するインセンティブは低いので、論点として、 顧客が代理店と仲立人の両方を使い分ける業務上の差異を明確にするためにすべきこと>などが議論された。

 3)の企業火災保険の赤字継続問題については、<家計・企業保険別の情報開示として、損保全社のディスクロージャー資料等においても、保険種目別の開示のみならず、家計保険と企業保険ごとに区分した情報開示が必要ではないか、損保協会では2012年度から「近年の風水害等による支払保険金調査結果」を公表し、火災保険の収支における風水害等の影響の程度を推論することも可能だが、家計保険・企業保険の区別はないように見える。また、風水害等の損害全体に占める比率の恒常的増加傾向を前提にすると異なるリスクプロファイルの風災と水災についても区分した情報開示が必要>、<企業向けの火災保険特有の慣行の有無として、近年、頻発する大型の風水害等の影響は少なからず、企業向け火災保険の収支に影響を与えていると思われるが、企業保険だけで見ても、火災保険の赤字が恒常化しているのであれば、その原因が何かを議論すべき、例えば、赤字覚悟でも引き受けを継続するような慣行があるのか否か、あるとすればその背後にはどのような理由があるのかなど、議論すべき>。

 火災保険では個人から企業物件まで一括りにしているのは国際的にみて珍しい、企業向けの保険については個別に組成していくなど自由化し、モニタリングをしっかりしていくべき、各企業ごとのリスク管理の仕方により事故の発生可能性は異なるが、他社にらみで保険料設定されている印象がある、各企業ニーズに応じた保険をタイムリーに提案できるよう商品認可を柔軟にしたらどうか。

 <近年の自然災害の規模・頻度の拡大は過去のデータからの想定を上まっており、保険料が上昇するのは必然である一方、保険会社間のシェア競争によりリスクに見合わない保険料の設定となっていることが赤字体質の大きな原因、損保会社を取扱件数、金額ではなく適正な利益率、災害時の保険金支払い実績、提供する保険の質等より幅広い視点で評価、監督するガバナンス体制を徹底するために必要な制度は何か。併せてそれを外部で評価できるような開示についても議論できないか>

 <リスクマネジャーのインセンティブとして、自然災害リスクの高まりの中で近年の企業保険の利用者調査では保険料の上昇に加え、キャパシティ不足への懸念もあり、保険が入手できない場合も想定され、今後保険リスクマネジメントの意識が高い企業ほど、キャプティブなど自家保有も選択肢となるため、積極的自家保有に対する何らかのインセンティブ付け(税メリットなど)についても検討の余地はある、国内の損保業界には、従来の保険金支払いという機能に加え、リスクコントロールサービスなど「保険会社のサービス価値」を含む、広範囲のリスクマネジメント・コンサルティングサービス力が、より一層求められるため、顧客本位の業務運営や健全な競争環境を実現する観点からどのような政策的対応が可能かについても広く議論を>等が議論された。

 4)の便宜供与では、便宜供与は保険の専門性をゆがめてしまう、労働者側からいっても取引先からの要求により時間外労働につながるものについては商慣習を見直すべき、企業契約者と企業グループに対するものがあるのでいずれも規制する必要がある等の意見が出た。また企業内代理店については、利益相反が生じやすく、役割を明確にすべき、企業グループの従業員にとっては団体契約や福利厚生のため重要な存在で安易に市場原理にゆだねるべきではない、企業内代理店といっても実態は様々で特定契約比率の見直しが提起されているが、これも一律に適用すると不合理となる可能性があるので検討すべき、更には<代理店への出向者のあり方、共同保険の価格設定のあり方、代理店・仲介人の質を担保するための資格試験のあり方代理店の規模に応じた内部管理、保険会社の監督のあり方リスクに見合った保険商品の提案力の向上>等の議論が出た。 

 このほか、<公正な競争を実現するためには保険会社、代理店、仲立人の努力のみならず、顧客である企業のリスクマネージメント能力の向上が必須。経営上とれるリスク、取れないリスク、リスクマネージメント上妥当なコスト意識が醸成されていなければ、各社各様の事業リスクに適切な保険の選定はできない。仲立人を活用する場合でも自社のとるリスクを決定し提供される保険の価値を判断するのは企業だし、また、保険会社の赤字体質、カルテルの根底には、保険会社のガバナンスの欠如のみならず、顧客である企業側の本業協力や株の政策保有維持といった、提供される保険の価値に見合わない価格設定を誘発する要因が存在することは否めず、こうした慣習を排除するために必要な行動規範についても検討できると良い>との意見もあった。

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